BLUE IN GREEN。


 台風21号の関係で、22日・23日の仕事がキャンセルとなり、思いがけない連休がやってきた。もちろん、台風ももれなく付いてくるのだが。

 とりあえず、選挙に行く以外はひたすら家でグダグダすることに決める。せっかくの休みだから休んだ気になるように悔いなくグダグダするのだ。


 22日は当然のように朝から雨。昼前に近くの小学校に投票に行く。校門前の選挙ポスターは赤と青と緑の3色。この選挙区の立候補者は3人。結局は赤・緑VS青の図式かな。白と青と緑の用紙をそれぞれの箱に入れて投票終了。昼近いせいか雨にしては投票所に向かう人の数は多いように感じた。


 自宅に戻り、読書にいそしむ。

 まずは雑誌『MONKEY』vol.13から堀江敏幸「あの辺り」を読む。特集が“食の一ダース 考える糧”であるため、12人の作家による食の出てくる短編が掲載されているうちの1編だ。「雪沼とその周辺」に連なる感じの世界観を共有する作品。寒冷地の冬に食べる糟汁が作中人物の回想と現在に登場する。落語の「二番煎じ」をちょっと思い出す。


MONKEY vol.13 食の一ダース 考える糧



 その後、最近買ったカズオ・イシグロ忘れられた巨人」(ハヤカワepi文庫)を読み始める。恥ずかしながら、ずうっと気になっていた作家であるが、その作品を読むのはこれが初めて。ノーベル文学賞を受賞したから急にその作品を読んだりすると動機のミーハー加減に眉をしかめる人がいそうだが、自分のことを棚に上げて言えば、本を読み始める動機に貴賤の上下などないと思っている。どんな動機だろうが本を手に取り、そして読書を楽しめればそれでいい。その本や作家が読まれないより読まれた方がずうっといいはずだ。ずいぶん前に「日の名残り」の文庫本を手に入れたような気がするのだが、見つからなかった。ジェームズ・アイヴォリー監督・アンソニー・ホプキンス主演の映画は見たのだが、本はまだ読んだことがなかった。カズオ・イシグロは僕の中ではまさに“忘れられた巨人”ということになる。


忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)



 さっきまで読んでいた『MONKEY』の表紙と同じ緑のカバーの文庫を少し読んだところで、先週から探していたこの本を見つけてしまう。


陸王


 TBSドラマ「陸王」が始まる前に原作を読むつもりだったのだが、見つからずついにドラマは先週スタートしてしまった。しかし、今週は選挙特番で「陸王」放映はない。これはドラマのイメージが頭に定着する前に本を読むチャンスという訳で、緑の文庫の代わりに青い単行本を読み始めることとする。

 池井戸本を読むのも初めて。さすがドラマの原作に引っ張りだこのヒットメーカーの作品だけあって、面白く読ませてくれる。ジェーン・オースティンの作品のように嫌な奴の存在が物語を動かして行くのも王道だな。池井戸ドラマでお馴染みの中小企業VS大企業の戦いに茂木というマラソンランナーの再起の物語をからめ、それを両輪として展開して行く。この原作をドラマがどう描くのか、悪役・小原をピエール瀧がどう演じて行くのかが楽しみだ。


 読書と並行してジャズのレコードを聴く。


ベイシー・アット・ニューポート(完全版)(紙ジャケット仕様)
モーション
カインド・オブ・ブルー+1
ポートレイト・イン・ジャズ+1



 最初の2枚はディアゴスティーニのジャズLPレコード・コレクション。選挙から帰ってきたら届いていた。後の2枚はBILL EVANS作曲の“blue in green”を共に収録しているアルバムを選ぶ。緑や青のポスターや本を見ていたらこの曲を聴きたくなった。


 とりあえず、今は緑よりも青の気分なのだろう。



 23日の今日も一日自宅でグダグダ過ごす。久しぶりに簡単な料理を朝晩作る。朝はコンソメに生姜の絞り汁を入れ、レタスをさっと煮たスープ。晩はキャベツのカレー煮。なんだか野菜ばかり食べている。

 明日から仕事かと思うと少し気持ちがブルーになる。今日はもう少しグダグダしていよう。