夏をあきらめるにはまだ早い。

 この一週間も、やはり暑さの中で過ぎた感じ。


 朝から屋内仕事でごっそり汗をかき、午後はぼんやりデスクワークをして夕方本屋に寄って帰る日々。

 その本屋で、色々買っている。

 例えば、『図書新聞』と『週刊 読書人』。この新聞を普段は滅多に買わないのだが、今回買ったのは共に“2017年上半期読書アンケート”と“2017年上半期の収穫から”という特集のため。目にとまったのは、ブレイディみかこ「子供たちの階級闘争」(みすず書房)、千葉雅也「勉強の哲学ー来るべきバカのために」(文藝春秋)、國分功一郎「中動態の世界」(医学書院)の3冊。これらの名前がよく出て来た。読んだ本と買ってあるけどまだ読んでいない本と地元で手に入らず持っていない本のトリオ。とりあえず、真ん中だけでもこの夏に読みたい。


子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から
勉強の哲学 来たるべきバカのために
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) [ 國分 功一郎 ]

 

 日曜日は屋内仕事は休み。その代わり、恒例になった母校の大学への出向仕事。僕のやっている仕事に就きたいと考えている大学生へアドバイスをするのだ。前期は10人以上いた学生が、今回はたった1人。マン・ツー・マンで5時間はキツかった。相手はもっと嫌だっただろうな。


 仕事を終えて近くの神保町に寄り道。これができるから引き受けている仕事と言ってもいいかもしれない。


 東京堂書店で2冊。


人生散歩術 こんなガンバラナイ生き方もある [ 岡崎武志 ]
感触的昭和文壇史 (講談社文芸文庫) [ 野口 冨士男 ]


 「人生散歩術」は出たばかりでまだ地元では並んでいない本。「感傷的昭和文壇史」は地元の本屋で毎月新刊が並ぶ講談社文芸文庫なのに何故か今月はいつまで待っても棚にその姿を見せないのでしびれを切らしてここで買ってしまった。





 帰りの車内では携帯本のこれを読む。

サザンオールスターズ 1978-1985 (新潮新書) [ スージー鈴木 ]


 僕が中学生の時にまるでコミックバンドのように登場したこのバンドを当時溢れていたテレビの歌番組で好感を持って聴いていた。しかし、自分でLPレコードを買うほどにファンだった訳ではなかった。それが自身でファンだと自覚するようになるのは大学生になってからだ。当時好きだった女性がサザンのファンで、話題作りと彼女との距離を詰めるための手段として積極的に聴くようになったことによってどんどん好きになって行った。その女性に振られてからもサザンへのファン心理は変わることはなかった。そのため、ファンとしてリアルタイムでアルバムを買ったのは「人気者で行こう」(1984年)が最初である。20歳の時だった。やはり、このアルバムが一番思い入れがある。著者が《初期サザンの最高傑作アルバム=『人気者で行こう』》と言っているのは我が意を得たり。これ以降サザンのアルバムは欠かさず買うようになって現在に至っている。iTunesに入れている「熱い胸騒ぎ」や「10ナンバーズ・からっと」を聴きながら本を読む。懐かしくも濃密な時間。


人気者で行こう



 職場から本屋を経由して自宅へ戻ると、最近手に入れたTBSドラマ「カルテット」のBlu-rayを観ていた。全話を観た後で第1話を見直すと既にここに様々な種が撒かれていることがよくわかる。そしてそれが後にどのような花を咲かせるかを知っているのでその種により一層ワクワクとしてしまう。何度となく味わえる作品。ありがとうショコラ。サンキューパセリ。

 不思議なもので、この夏の軽井沢出張が決まった。もちろん「カルテット」の舞台となった街である。軽井沢に行くのは学生時代以来だろうか。楽しみ。





 その他には、huluで野村芳太郎監督「張込み」(1958年)を観た。先日松本清張の原作小説を読んだ余波である。冒頭の夜の横浜駅。九州の佐賀に向かう夏の列車。原作にもあった列車の旅情がより濃密に蒸し暑く描き出されている。宮口精二のベテラン刑事と大木実の若い刑事の2人が子連れのケチな中年男の後妻に入った高峰秀子を張込む。このセットを使ったシーンが素晴らしい。セットの素晴らしさもあるが、セットだからこそ、張込む刑事たちのいる旅館とその向かいの張込まれる家の息詰まる世界が迫ってくる。高峰秀子が家を出ると画面はロケーションになり、日常の世界に変化が訪れる。雨の日に傘を旦那の職場に淡々と届けに行く雨傘のシーンと別れた恋人(この田村高廣を刑事たちは追っている)に会いに行く夏の日の日傘のシーン。同じ女性の持つ二つの顔がこれらの傘に現れる。最後のシーンはやはり夜の佐賀駅。刑事と犯人を乗せた蒸気機関車が今出発しようとしている。駅のアナウンスは佐賀から東京までの停車駅を延々と語る。旅の長さを感じさせつつ重々しく車輪が動き始めるその姿で映画は終わる。こんなに夜の駅を魅力的に描いた映画を他に知らない。いい映画だった。


 土曜日には「SHERLOCK」のシーズン4第3話「最後の問題」を観た。明らかに今後諸事情(主演の2人の俳優の多忙や仲違いなどが囁かれている)でこの作品の続編ができなくなっても困らないような結末の付け方だな。これで終わるとすれば残念だが、それもまた致し方ない。これまで充分楽しませてくれた作品に感謝。


 楽しんできたテレビドラマは終わったので、この夏はもっと本を読むようにしようと思う。仕事に追われてはいるが、夏をあきらめるにはまだ早い。