垂涎の装画家。


 GWにすでに入っているなんて実感がなく、4連休の初日の土曜である昨日も朝から出張野外仕事である。


 雨の心配がないのはありがたいが、思った以上に気温が上がり、5月の陽光が容赦なく照りつけてくる。野外仕事が終了した夕方にはもう、顔も半袖シャツから出ていた二本の腕も真っ赤に日焼けしていた。


 帰宅途中に横浜の有隣堂に寄る。


偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)

偶然の装丁家 (就職しないで生きるには)

あつあつを召し上がれ (新潮文庫)

あつあつを召し上がれ (新潮文庫)



 「偶然の装丁家」は晶文社が最近出している“就職しないで生きるには21”シリーズの1冊。このシリーズの装丁をしているのが、著者の矢萩多聞氏。本体の4分の3はある大きな帯が目をひく造本だ。中に手書き文字で作った“就職しないで生きるには21通信”という冊子が入っていてそれによるとシリーズの次回配本は夏葉社の島田潤一郎さんになると書いてある。これも買わなきゃと思う。2014年6月中頃の刊行予定か。6月はワールドカップと読書のせめぎ合いの日々になりそうだな。


 「あつあつを召し上がれ」は著者には悪いが装画買いである。カバーの絵を描いているのは武藤良子画伯。何度かこの日記に書いているが僕は画伯の絵と書き文字のファンである。春にポポタムで行われたTシャツのイベントでもあれこれ迷いながらも結局武藤画伯の描くボエーズのTシャツを購入しているし、何年も前にまだTシャツ制作を行ってはいなかった画伯にお願いして職場で使うTシャツのロゴを描いてもらったこともある。その時は、謝礼として「美味しいものを食べたい」という希望を受けて食事をごちそうすることで許してもらったのだが、今や売れっ子のイラストレーターである画伯に同じ条件で新しいTシャツのロゴをお願いするのはもう難しいだろうなあ。また、新規のシャツを作りたいと思っているのだが、今度、画伯が空腹の時を狙ってお願いをしてみるか。




 夜は、NHKで「ロング・グッドバイ」の第3回を観る。戦後の混乱期を舞台とすることで、チャンドラー原作のバタ臭さを成立させようとしているんだろうなあと思いながら眺めているのだが、今ひとつのって行けないのは、美女役として登場している小雪冨永愛に昔からピンとこないからだろう。彼女たちの魅力が前提のストーリー展開だけにそこに反応できない観客はつらいことになる。渡辺あや脚本には期待しているのだが。


 朝4時起きのダメージが出て、観終わる頃にはバタンキュー。





 今日はGW唯一の休み。とりあえず睡眠をとることとどこへも出かけず体を休めることに専念する。


 洗濯機を2度回し、その間にiTunes Matchの登録を行う。すでに160GBの容量を誇るiPod Classicの残量も少なくなっている現在、PCのハードディスク容量を気にせず、iPadやwindowsPCでMACPC内のiTunesの内容をいつでも引き出せるこのシステムはやはりありがたい。しかし、iTunes内の6500曲ほどを4000曲余りスキャンしたところでiTunes Matchは微動だにしなくなった。ありがたい環境を享受するのにはまだしばらくかかりそうだ。


 遅い昼食をとってから、録画しておいたEテレ「辞書を編む人たち」を観る。舞台は三省堂の「大辞林」編集部。改訂作業に専心する編集長とそこに配属された辞書を愛する大学院生のインターンの姿を柱にしたドキュメンタリー。大学院生の石塚さんの部屋の映像に思わず「おおっ」と声が出る。自分の部屋も含めて本に埋もれた部屋はあれこれ見てきたが、部屋がほぼ辞書だけで埋もれた部屋は初めて見た。個人的にツボだったのは「エッジ」という言葉の語釈に悩む石塚さんにジャズ好きの編纂者が2枚のCDを渡すところ。エッジの利いたジャズ奏者としてジャッキー・マクリーンをCDショップの人が挙げていたので彼の「SWING SWANG SWINGIN」を渡していたのは理解できたのだが、もう一枚がポール・デズモンドの「BOSSA ANTIGUA」であったのに驚く。2人とも大好きなサックス奏者だが、デズモンドの音楽をエッジが立っているとは言いがたいのではないかと思ったのだ。すると画面からデズモンドのアルバムがエッジの立っていない音楽の代表として持ってこられたものであることが判明したので思わず笑ってしまう。この編纂者の人の感覚とジャズの好みが自分と重なっているのを知って好感を持った。


 番組の後半で編集長が次の「大辞林」を電子版をメインにし、書籍版をサブとして刊行する決断をする。紙の辞書が好きな人間として少し残念な気分になるが、ふと我に返ると自分がこれまで一度も紙の「大辞林」を買ったことがないことに思い至る。そうだ、これまで僕が手にした「大辞林」はすべて電子版であった。今も手元にあるiPadスマートフォンには当たり前のように「大辞林」のアプリが入っているのだが、本は一度も買ったことがない。編集長の決断に異を唱えることなど僕にはできないのだ。改訂版の「大辞林」が出るのは数年後だろう。その時も僕はやはり電子版を買うと思う。



 午後は音楽を聴きながら仕事関係の本を読む。BGMは先ほど出てきたこの2枚。



スイング・スワング・スインギン

スイング・スワング・スインギン

Bossa Antigua

Bossa Antigua





 改訂される「大辞林」に載るかもしれない「エッジ」の語釈は「めりはり」がキーワードになっていた。マクリーンのメリハリのあるサックスも、デズモンドのメリもハリもすべて柔らかく包んでしまうサックスもともに好きだということを再認識しながら休日は終わる。




 
 iTunes Matchは夜になっても4078曲目から微動だにしない。