さよなら冷中の日。

 今日は遅番。


 やっと秋らしい風が感じられるようになった。おろしたての茶のスラックスに足を通し、しばらくぶりにブラウンのリーガルシューズを履き、家を出る。クリーニング屋に寄り、数枚の半袖ワイシャツを貯めておいたサービス券と一緒に出す。半袖をクリーニングに出すのもこれが今年最後かな。



 陽射しはあるが風はやはり秋だ。気持ちがいいので職場まで歩くことにする。iPodで聴くBGMは加藤千晶「蟻と梨」の「蟻」の方。「発車オーライ」のテンポのいいリフレインが心地いい。


        《 きみの町は電車で二駅
          でも電車は来ない
          自転車はパンク
          ガソリンもない
          どうしよう?     》


 僕は歩いて行く。


蟻と梨

蟻と梨



 途中のコンビニでおにぎりとごぼうサラダ。今日の昼食だ。レジで忘れぬようにTポイントカードを出す。夏場の経済的不摂生の影響でこのところ緊縮財政を余儀なくされているのでこのようなポイントもバカにできないのだ。



 ついこの間まで冷房がなくては夜も日も明けぬという感じであった職場も窓を開け放ち、涼しい風と子どもたちの戯れる声が入ってくるという変り様だ。夕方近くの野外仕事も上着を脱いだ半袖姿ではもうすでに肌寒い。



 今日は8時前にあっさりと退勤。緊縮財政でも本屋には寄る。


 単行本の新刊を並べた平台にこれを発見。


東と西 横光利一の旅愁

東と西 横光利一の旅愁



 サイフのことを考えると、「講談社であれば数年後に文庫になるからその時買っても」という声が頭の中にするが、このカバーの題名及び作者名の手書きの文字を見れば当然これは横光利一の初期作品の装釘を手がけていた佐野繁次郎の書き文字をイメージしていることは明らかだろう。佐野繁次郎の書き文字装釘には目がないのだからたまらない。平台から手に取る。



 雑誌コーナーでこれを見つけてしまう。

  • 『ぴあ 特別編集版 山下達郎“超”大特集』


ぴあ Special Issue ~山下達郎“超

ぴあ Special Issue ~山下達郎“超"大特集号~ (ぴあMOOK)



 昨日、CDショップのポイントカードを使って山下達郎「OPUS」を手にしたばかりの身にとってはこの特集は見過ごせない。結局これもレジへ持って行く。


 いつもの通り、レジで「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれるが、「いいえ、結構です」とこたえる。書店のポイントカードは意固地に持たない。使わない。




 帰宅後、豆腐と納豆をメインとしたささやかな夕餉をとり、「OPUS」を流しながら、『ぴあ』の「山下達郎“超”ロングインタビュー」を読む。このベストアルバムを買った人は必携の充実ぶり。友人に誘われて1990年代に行った中野サンプラザのコンサートを思い出した。



OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)

OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)


 「さよなら夏の日」を聴きながら、日焼けとストレスだけを残して行ったこの夏が終わるのはちっとも寂しくはないが、先日行きつけの中華料理屋で最後の冷し中華を食べようとしたところ「もうやっていないんですよ」と言われたのは残念だったと思う。