珈琲とチーズケーキと文人。


 今日は午後から久方ぶりの都内出張。


 夕方に仕事が終わり、すぐに地下鉄に飛び乗って神保町へ。地元では手に入らないもので欲しいものがあれこれと頭に浮かぶ。しかも一年で一番ストレスフルな時期にあるときては己の中にある買い物依存症へのブレーキはすでにバカになってしまっている。

 

 まずは東京堂へ。


 なるほどこれが現在エスカレーター設置工事のために普請中の東京堂か。脳内地図と現前の棚との齟齬に動きがぎこちなくなってしまう。

珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎

珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎

白秋望景

白秋望景

JAZZ雑文集

JAZZ雑文集



 1冊目は“港の人フェア”の棚からサイン本をチョイス。
 2冊目は永井荷風林芙美子に続く川本版評伝の3作目とあればやはり読みたくなる。次はあとがきに出てくる野呂邦暢の評伝を期待したいな。
 3冊目はディスクユニオンで出した文庫の第1弾らしい。昔から寺島さんの文章を愛読してきたのでやはりこれも読みたい。『一冊の本』、「朝日新聞」、『スイングジャーナル』に連載した文章をまとめたもの。“雑文集”は村上春樹本から〈頂いた〉らしい。



 三省堂の4階へ。


さよならのあとで

さよならのあとで


 夏葉社の新刊とあればもちろんレジへ。溜め息が出るほどひそやかな本。だけどしっかり主張している本。帯の文字のレイアウトがいい。




 今日一番の買い物を忘れていたと交差点を渡って岩波ブックセンターへ。


植草甚一の勉強

植草甚一の勉強


 『みすず』だけでは何か悪い気がしてそのうち買うつもりでいた「植草甚一の勉強」も一緒に購入。入口正面の棚で“みすず大人の本棚”フェアをやっていて僕の前に並んでいた年配の女性が2冊“大人の本棚”本を買っていてうれしくなる。



 また交差点を渡って伯刺西爾へ。コーヒーとチーズケーキと『みすず』を楽しむ。これを喜びと言わずして何を喜びと言おう。


 帰りの車内でも『みすず』を堪能。アンケートのページが終わり、「編集部より」というコーナーを読んでいて思わず声を上げそうになる。


〈昨年十二月三十日、映画史・文化史研究家の田中眞澄氏が急逝されました。〉


 さっき、田中氏のアンケートを読んだばかりだったのでまさに不意打ちをくらったような驚きを感じた。小津安二郎の研究者として複数の著作があり(それらは蓮實重彦「監督 小津安二郎」と同等のものとして本棚にある)、「ふるほん行脚」という著書を持つ古本者でもあった田中さんは僕にとって気になる文筆家だった。その昔『文學界』で連載していた「その場所に文学ありて」は同じ雑誌で連載されていた坪内祐三「文学を探せ」とともに僕の興味をかき立ててやまないものであった。「文学を探せ」は書籍化されたが、「その場所に文学ありて」はそのままになってしまっている。田中さんの遺文集が編まれることがあれば是非入れてほしい。また「ふるほん行脚」出版以降に『みすず』に連載された同名の連載も収録してほしい。田中さんは自宅で本に埋もれて亡くなっていたらしい。研究者というよりいつも「文人」という言葉を思わせる人だった。



 帰宅して録画しておいた「孤独のグルメ」第5話を観てから、「めしばな刑事タチバナ」第4巻を読む。どちらも面白いし、食欲がわく。


めしばな刑事タチバナ 4 [アイス捜査網] (トクマコミックス)

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