北海道に来ている。
四方を雪で囲まれたホテルにもう数日宿泊している。昼はスキーを履いてあちこちを見て回るのが仕事。板を脱いでホテルに戻れば比較的自由な時間が多い。そこで、長編小説を読もうと鞄に村上春樹「羊をめぐる冒険」を入れて来た。この小説を読むのは大学時代以来だから、約30年振りの再読だ。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/15
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- 作者: 村上春樹
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このホテルについてから夜はずうっとこの本を読んでいた。クリスマスには携帯でYouTubeのビンク・クロスビー「ホワイト・クリスマス」を流しながら、読んだ。
《僕はプレーヤーをオート・リピートにしてビンク・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」を二十六回聴いた。》
久しぶりに読んだ「羊をめぐる冒険」はニヤニヤしてしまうほど、村上春樹的比喩のオンパレードで、自分がいかにこの文章に影響を受けてきたかを再認識した。作品としては第3作なのだが、本格的長編としては処女作と言えるこの「羊をめぐる冒険」にはこれ以降の村上春樹的長編のエッセンスがあれこれ詰まっているという印象を受ける。もちろん、初読のときはそんなことは分からなかった。これも再読の喜びだ。
「僕」が「鼠」を待つ北海道の山中にある山小屋にも雪が降り始めた。本を読む部屋の窓の外にも雪。
ホテルの夕食はバイキング。「いるかホテル」よりもちろん数段いいホテルだ。北海道の食材で作られた料理はどれもうまく毎食皿の上に山盛りとってしまう。確実に食べ過ぎている。
《僕は再び太りつつある。》
午後には現地での仕事を終え、バスで空港へ。心配していた降雪はなく、飛行機は定刻に飛び立った。搭乗前に食べたラーメンで腹が重い。飛行機の中でも「羊をめぐる冒険」を読み続け、羽田空港の上空にさしかかった時にちょうど「エピローグ」を読み終えた。