じみに。


 今日も休日出張野外仕事。


 秋の風なので日が当たる野外で座っていてもあまり苦にならない。空き時間は携帯本の荻原魚雷「本と怠け者」(ちくま文庫)を読む。この本は、『ちくま』に不定期連載されていた「魚雷の眼」を中心に編集された文庫オリジナル。怠け者としての生き方をいつも考えている魚雷さんが、その琴線に触れた文学者たちを低い声で語る。決して声を張ることはないが、その淡々とした語り口にぶれないしなやかな強さを感じる。流行や主流と言った日の当たる流れに乗ることなく、地味に日陰を歩き続ける遅行の堅実さとでも言おうか。基本、怠け者のくせに世間の流れに棹さすことしかできず、ひいひい日々を過ごしている僕にはない強さだ。


本と怠け者 (ちくま文庫)

本と怠け者 (ちくま文庫)


 弱い僕は職場に戻らなければならないので、出張を早めに切り上げバスに乗る。


 今日も有隣堂に寄り道して講談社文芸文庫の新刊を買う。


朝夕 感想・随筆集 (講談社文芸文庫)

朝夕 感想・随筆集 (講談社文芸文庫)


 年譜・著書目録は武藤康史氏。いっそのこと解説も武藤さんに書いてほしい。



 職場のひとつ手前の駅で降りて知人のパン屋へ。今日も盛況。閉店1時間前とあって品物も少なくなっていた。一昨日はなかった焼き菓子も買う。


 職場はほとんどだれもいない。3連休の最後の夜にわざわざ仕事をしにくる物好きはマレだよなと我ながら思う。だれかいたら買って来たパンをお裾分けしようと思ったのだがそれもかなわず。外は涼しいのに空調を切った職場は変に蒸し暑い。自分1人のために照明をつけているのが後ろめたくなり予定より早めに退勤する。



 帰宅して今夜もパンを食べる。日本のパンと違い「砂糖と油の入るものはパンじゃない、それは菓子だ」という教えの国のパンは見た目は地味であるが噛めば噛むほど口の中に濃いものが広がっていく。魚雷さんの本が語るものにどこか似ているような気がする。



 今夜はこれを聴く。


にじみ

にじみ


 昭和なアナウンサーなら「七色の歌声、二階堂和美さん、どうぞ」と紹介しただろうな。