自炊よりつまみ食い。


 
 朝、書類にミスを見つける。


 とても単純なミスであるが、とても重要なミスでもある。すでにその書類はデータとしてはメールで、書類としては郵便で相手方へ発信を済ませてしまっている。急いで連絡をとるが相手が捕まらない。どうにか話が出来たのは昼過ぎだった。


 書類の差し替えを了解してもらったが、時間がない。明日の朝までには訂正した書類を相手方に届けなければならないのだ。今から速達かメール便で送れば間に合うかと考えているうちに直接届けにいけば早いというあまりに簡単なことに気づいた。住所を見れば行ったことはないがそんなに遠い場所ではなく、歩いていくこともできる距離であることが分かった。電車やバスも利用出来るが、場所が中途半端なところにあり、そのどちらを利用しても結局はそれなりに歩くことになる。それならば、ここから歩いていこうと決心する。ミスを犯した自分にタクシーという贅沢を許す気持ちにはならなかった。


 スマートフォンGPS機能とグーグルマップを使い、ルートを検索し、その指示通りに歩く。4時を過ぎているが、陽射しはまだ昼の力強さを手放してはいない。歩道の日陰を求めながら歩く。川を渡る。橋の上は風が吹いて気持ちいい。季節がすでに秋であることを教えてくれるような風だ。


 最後に曲がるポイントの道がグーグルマップのイメージとは違うずいぶんと細い道であったため見過ごしてしまうというトラブルはあったが、無事書類を届けることができた。ほっとしたと同時に身体に水分がほとんど残っていないことに気づく。最寄り駅まで歩く気力もなくなったので途中からバスに乗り一番近い駅に出る。


 今日の仕事は終わり。夕方6時半に友人と待ち合わせしているのでそれまで1時間ほど余裕がある。近場のブックオフに寄る。


 “レンズが見た昭和20年代・東京”の副題をもつ写真集。銀座のバア「ルパン」での太宰・織田作が記録されているので名を知られた本だ。安吾を愛読した者にとってはあの有名な万年床の書斎写真が入っているのだから座右に置いておきたい1冊。もちろん持っているのだが、見つけるとやっぱり買ってしまう。実は別の棚で「カストリ時代」をもう1冊見つけてしまう。共に105円。そして両方買ってしまうのだ。好きな本は何冊あってもいいし、好きな本を誰かにあげるのも気分がいい。そのために複数冊持っている状態でいられるのはやっぱりうれしい。


 ブックオフを出て、あゆみブックスへ。


 今度この店に来たら買おうと決めていた1冊を購入。


賢治と鉱物

賢治と鉱物


 ここには必ず工作舎の新刊が入るのだ。僕にとって宮澤賢治安吾が激賞した詩「眼にていふ」の作者だ。賢治作品に出てくる賢治の愛した鉱物を写真入りで紹介した本なのだが、その写真がいい。いや写真に撮られた鉱物の色がいい。サファイアの青、翡翠の緑、硫黄の黄色、月長石の白、すべてが美しい。ただ眺めていても満足できる本。


 地元駅に戻り、友人と待ち合わせてベトナム料理屋へ。事情があって昨日の夜から何も食べていないという友人とともに生春巻き、バインセオ、土鍋ごはん、鶏のフォーを食べまくる。なんだか年々ヌクマムの味が好きになるな。


 友人と別れて帰宅。

 世界陸上を見てから、昨日作ったアン・サリー嬢の自家製コンピレーションCD「後拾遺集」を聴く。

 アン嬢のアルバム以外の楽曲から比較的最近のものを集めた。収録曲は以下の通り。

1. Smile-Opening version
アン・サリー & 細野晴臣(NHKスペシャル マネー資本主義 テーマ音楽「Each Smile」)
2. Smile-Solo version(同上)
3. Yesterday(「Apple Of Her Eyes りんごの子守唄」)
4. めぐり逢い (ショーロクラブ武満徹ソングブック」)
5. 死んだ男の残したものは (ショーロクラブ武満徹ソングブック」)
6. Smile-Goodtime version
アン・サリー & 細野晴臣(NHKスペシャル マネー資本主義 テーマ音楽「Each Smile」)
7. おなかいっぱい!(笹子重治「onaka-ippai」)
8. 時間旅行(「時間旅行Soundtrack」)
9. たなばたさま (Ann Sally + Hands of Creation「にほんのうた 第二集」)
10. はらいそ(Ann Sally + PAN CAKE「細野晴臣STRANGE SONG BOOK 」)
11. Someday(「雪と花の子守唄 ~バカラック・ララバイ集~」)
12.歌の力(アン・サリー & 杉並児童合唱団「歌の力」)
13. Smile-Solo-Long version
アン・サリー & 細野晴臣(NHKスペシャル マネー資本主義 テーマ音楽「Each Smile」)
14. Goodnight(「Apple Of Her Eyes りんごの子守唄」)


 雑誌や本をバラバラにしてスキャンし、電子本にして持ち歩く自炊よりも、こういったつまみ食いの方が僕は好きだな。