灯りの中で。


 朝目覚めてTVをつけるとやはり地上波のほぼすべては震災報道を繰り返している。


 津波の映像を何度も観ていると精神的に何か追い込まれて行くような圧迫感があり、それを避けて録画しておいたインテルvsブレーシア戦を観る。震災で亡くなった被災者を悼んで両チームが喪章を付けてプレーしているのだから、ここでも震災から目を背けることはできない。


 日曜日の新聞は書評欄が楽しみなのだが、今日の紙面はすべて震災で塗りつぶされてる。朝食のパンの屑受けとして敷くこともためらわれてしまう。


 昼に昼食をとりがてら街に買い物に行く。


 駅ビルの菓子売り場に行き、明日のためにチョコレートを買い込む。職場では義理チョコが氾濫しており、義理と分かっていてもお返しをしないわけにはいかない。これも仕事なのだ。経費は出ないが。


 日曜日とあってホワイトデイ用の特設会場には人が溢れている。水や食料といった生活必需品を買い込む人々が同時に飢えを充たすわけではない装飾過剰なパッケージに包まれた菓子を行列を作ってまで買い込むこの光景を何だか不思議なものとして眺める。


 
 気分転換に本屋へ。ちくま文庫の新刊が出ていた。

銀座旅日記 (ちくま文庫)

銀座旅日記 (ちくま文庫)


 『ダカーポ』に連載されていた「銀座旅日記」をまとめた文庫オリジナル。同じ『ダカーポ』連載の坪内祐三「酒日記」は単行本になっているのだが、「銀座旅日記」はなっていなかったとは知らなかった。


 集英社文庫のコーナーに行ったら堀田善衛ゴヤ」(集英社文庫)全4巻が完結していた。出ているのは知っていたのだが、大部なのとゴヤそのものに特に関心がなかったので買う気はなかった。それが今日最終巻の帯を見たら僕の信頼する先生が《現代文学として『ゴヤ』はずばぬけて優れた傑作なのである》と激賞しているのを知り、そこまで言われたら買わないわけにはいかなくなった。

ゴヤ 2 マドリード・砂漠と緑 (集英社文庫)

ゴヤ 2 マドリード・砂漠と緑 (集英社文庫)

ゴヤ〈3〉巨人の影に (集英社文庫)

ゴヤ〈3〉巨人の影に (集英社文庫)

ゴヤ〈4〉運命・黒い絵 (集英社文庫)

ゴヤ〈4〉運命・黒い絵 (集英社文庫)



 地元のコンビニには今日もおにぎりやカップラーメンなどの食料品の棚がガランとしていた。ソ連時代のスーパーマーケットの映像のようだ。


 帰宅して地震のあった日から今日までの日記を書く。TVを見たりラジオを聴いたり、ツイッターのTLを眺めたりして夜を過ごす。


 明日の夜はどうやら自宅のある地区は停電となるらしいため、灯りのある夜をいつも以上に有り難いものとして過ごす。