CALLING ME。


 地震の夜が明け、始発から電車が走り始めた。


 避難者をすべて帰し終え、午前9時過ぎに退勤する。


 朝食をとっていないため駅前に行くが、吉野家すき家日高屋などは営業を中断しているという張紙をしてあってやっていない。そのせいもあってマクドナルドには長蛇の列が。すこし離れたファーストキッチンに空席を見つけ、入る。まともな食事(非常食の後ではファストフードもそう思える)をとることができ、すこしホッとする。携帯も正常になり、友人から無事を知らせるメールも入る。とてもホッとする。


 開いたばかりの本屋に飛び込み書棚を眺める。やっと自分の日常が戻ってきたような気分になる。

本の雑誌 334号

本の雑誌 334号

大陸の細道 (講談社文芸文庫スタンダード)

大陸の細道 (講談社文芸文庫スタンダード)



 『本の雑誌』は“一人出版社の時代がきたぞ!”特集。

 「大陸の細道」は1990年に出た講談社文芸文庫の新装版。旺文社文庫を持っていたためこれまで講談社文芸文庫版は持っていなかったのだが、この機会に買っておく。


 早く帰って風呂に入ってさっぱりした後、蒲団に横になりたい。その時のBGMが欲しくなり、CDショップに寄って、女性ボーカルがいいだろうと考えこれを選ぶ。

  • HOLLY COLE「the best of HOLLY COLE」(EMI)

私の時間~ベスト・オブ・ホリー・コール~

私の時間~ベスト・オブ・ホリー・コール~

 ホリー・コールは「コーリング・ユー」が好きでデビュー当時はCDを買ったりしたのだが、その後僕にはあまりしっくりこなくなったためほどんど聴かなくなってしまった。最新ベストアルバムとのことなので、今聴いたら違う印象を受けるのではないかと期待する。


 バスを降りて、地元のコンビニに入るとサンドイッチ、おにぎり、カップラーメンの棚はほぼ空の状態になっていた。人々のこの震災に対する恐怖がこんな風にあらわれているのだろう。


 帰宅し、ドアを開ける時にちょっと緊張する。本棚や平積みにしておいた本はどうなっているのだろうかと不安がよぎる。部屋に入り、中を眺めると確かに平積み本はほぼ全壊していたけれども、本棚は倒れることなく無事であった。しかし、本の雪崩は台所から居間へ行く通路をすべて塞いでおり、まずこれをどうにかしない限り仮眠をとることも風呂に入ることもできない。コートとスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを外してからおもむろに本の雪崩を片付け始める。ほぼ1時間半の時間を要し、自分のライフラインの復旧に成功する。


 ホリー・コールを聴きながら風呂に入り、その後蒲団の上にごろりと横になる。仕事の電話で起こされたので1時間半ほどの仮眠となった。


 やはり、ホリー・コールのベストは僕にとって「コーリング・ユー」だなと思う。


 夜はなにもする気になれずTVの震災報道をぼんやり眺める。悲痛な映像ばかり見せられることに耐えられなくなると、CSにチャンネルを回し、サッカーなどを見てバランスを取る。


 今日来た友人からのメールを何度か読み直す。以前は同じ仕事をしていたので、昨日から今朝にかけての仕事がどのようなものか分かった上でなされているその励ましと末尾に添えてくれた誕生日への祝辞に心なごむ。こんな時はこんなささやかなことがうれしいのだ。そのため友人に対して「困ったことがあったら呼んでほしい。僕のできることは何でもするよ」とオバマ大統領のような台詞を口にしたくなる。