百鬼園均一。


 休日出勤で職場へ行く。


 秋晴れの爽やかな午前中を仕事に費やし、午後1時に仕事を終え、そそくさと車上の人となり、神保町に向かう。


 地下鉄の出口から地上に出ると、わんさかと人がいた。今日が“神田古本まつり”最終日なのだ


 古書店街の歩道に並んだ屋台形式のブースには人がスズナリとなっており、棚を見るのも大変なら、人波をかき分けて進むのも容易ではない。古本漁りにはさっさと見切りをつけて、お目当ての新刊を買いに東京堂書店へ。

フーテン(全) (ちくま文庫)

フーテン(全) (ちくま文庫)

好物漫遊記 (ちくま文庫)

好物漫遊記 (ちくま文庫)

 ちくま文庫ちくま学芸文庫の復刊からこの2冊を選ぶ。「フーテン(全)」はずうっとこのちくま文庫版を探していたのだが、絶版で見つける事ができなかったもの。作品自体はまんだらけの復刊で読んではいるのだが、復刊を寿ぎ買っておく。


 続いて東京堂ふくろう店へ。


 編集工房ノアの新刊である山田本はやはりこの店で買いたいと思っていた1冊。中に収められているエッセイの多くは『海鳴り』や『CABIN』で目を通したものではあるが、本の形で読み直すのが楽しみなものばかり。
 その他、気になっていたミニコミ2誌を買って店を出る。


 やはり、街はどうしようもなく人であふれているため、早々に退散することにする。どなたかが、どこかで書かれていたように、普段これだけの人がこの街にきて古本をこれだけ買っていたら今のような不況の風が吹くこともないだろうにと思う。ただ、普段の神保町がこんなにも人にあふれた街であったなら、僕の足は確実に遠のくと思うので複雑な心境ではあるのだが。

 
 帰る前に岩波ブックセンターに寄ってこれを。

古本屋名簿―古通手帖2011

古本屋名簿―古通手帖2011

 手に取ってページをめくってみると地図はなく、店の名前や住所などが載っているだけだ。そうか「古本屋地図」ではなく「古本屋名簿」なのだなと納得する。携帯に丁度いい大きさ厚さと鮮やかな緑色をした姿は好感が持てる。岩波ブックセンターが付けてくれた栞も同じ緑だった。


 休日なので、神保町のめぼしい昼食どころのあらかたは休業している。そこで、日本特価書籍の先にある吉野家に入る。牛鍋丼大盛りと卵とコールスローのセットを食べた。〆て500円。客のほとんどが古本まつりに来たと思われる人だが、8割方は牛鍋丼並み280円を頼んでいる。この牛鍋丼の効果で吉野家の来客数は増加しているそうだが、逆に客単価は下がっているらしい。不況の風はここにも確実に吹いている。



 帰りの車内では神戸の海文堂書店が編集協力をしている『ほんまに』の最新号から前号に続いて掲載されている「非カリスマ書店員座談会2」を読む。海文堂書店の店員であり、この座談会の構成もしている北村知之さんが前号に続いて自分の意見をはっきりと口にしているので読んでいてなにやら清々しい。もちろん、語られている内容は何ともやりきれなくなるような書店員の現状であるわけなのだが、それでも本や書店が好きな人たちの話を聞いているのはどこか楽しい。


 地元に戻り、床屋へ寄る。今週末に小学校時代のクラス会があるため、もっと早く来たかったのだが、休みが取れず今日まで先送りになっていたのだ。店に入った瞬間、客が誰もいないことに気づく。休日の午後に誰も客のいない床屋の姿にまた不況という言葉が頭に浮かぶ。
 その後、僕が頭を刈られている間に客が複数来て3つある椅子は全部埋まったので少しホッとする。隣の椅子の客と店主の会話もやはり不況の話。不況の影響を一番早く受けるのはタクシーと床屋で、景気が良くなれば不況から一番先に抜け出すのもこの2業種なのだそうだ。街の床屋のライバルである駅ビルなどにある1,000円均一の簡易散髪屋の中にはついに690円の店まで登場し、デフレは頭の上にも来ているらしい。


 散髪の後は、いつもの中華料理屋でレタスチャーハンとジャンボ餃子。先週末に宇都宮で嫌というほど餃子を食べまくり、「しばらく餃子はいいや」と同僚と話していたにもかかわらず、それを忘れてまた餃子を頼んでいる自分に驚く。


 帰宅後、週末に迫った外市の準備をする。
 今回も出品はできるが、仕事と家事都合で外市会場には顔を出せそうもない。
 また、今回は内田百鬼園先生の旺文社文庫を10冊近く出した。それと言うのもこの百鬼園先生を卒論にしていた大学の同級生の再就職がこれまた不況の煽りでごわさんとなり、困った状況になっているため伴健人商店の売り上げを些少ではあるが友人に寄付しようと考えているのだ。そのために友人の大好きな百鬼園先生にすこし手助けしてもらおうというわけ。全部を百鬼園本で揃えて“百鬼園均一”と洒落たいところだが、持ち駒すくなく、文庫以外には単行本数冊が精一杯。他の本もいろいろ入れてなんとか50冊以上になった。


 友人のためにも外市に多くの人が来てくれることを願う。


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「外、行く?」
第23回 古書往来座 外市〜軒下の古本・雑貨縁日〜
南池袋・古書往来座の外壁にズラリ3000冊の古本から雑貨、楽しいガラクタまで。敷居の低い、家族で楽しめる縁日気分の古本市です。7月、9月と暑すぎる気候が続きましたが、いよいよ外市日和の時期到来。2010年度最後の開催となります。

■日時
2010年11月6日(土)〜7日(日) 
雨天決行(一部の棚などは店内に移動します。)
6日⇒11:00ごろ〜19:00(往来座も同様)
7日⇒12:00〜18:00(往来座も同様)

■会場
古書往来座 外スペース
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/
→池袋ジュンク堂から徒歩4分
東京メトロ副都心線雑司が谷」駅・2番出口から徒歩4分
都電荒川線鬼子母神前」電停より徒歩6分

▼メインゲスト
盛林堂書房 from 西荻窪
http://d.hatena.ne.jp/seirindou_syobou/

■主催・わめぞ  http://d.hatena.ne.jp/wamezo/