水曜当番でしょう。


 水曜日はいつもより少し早く起きて職場へ行く。家からバス停までの道にも、駅から職場までの坂道にもいつもと違う顔の人たちが歩いている。それが少し真新しくおもしろい。


 いつも買っているミックスサンドと牛乳をいつもより早い時間に職場の机で食べ、洗面所で歯を磨いてから階段を下りてある場所に行く。その場所は毎朝決められた時間に開けられねばならず、その係は曜日ごとに担当者が決まっており、水曜日は僕の番というわけだ。


 idカードでロックを解除し、真っ暗なその部屋に入り、灯りをつけ、空調を入れた後、本や資料が山積みの倉庫の中へと進み、一番奥にあるフットボタンを踏んでディスプレイの電源をオンにしてまた倉庫を出る。部屋の中に異状がないかを歩き回って確認したらすることはもうほとんどないので椅子に座ってその部屋に備え付けられている新聞から日曜の読書欄を探しめぼしい書評に目を通す。そんなことをしているうちに部屋の利用者たちが徐々にやってきて奥に用意されたテーブルが埋まって行く。そんな時間をしばらく過ごしていると次の時間帯の当番の同僚がやってきて交代。部屋を出て自分の机に戻り、ペットボトルのコーヒーを飲みながら今日の仕事の準備を始める。


 そんなのんびりしているような水曜の朝が終わるとあとはノンストップのジェットコースタームービー(たとえが古いね)のような1日が始まり、そして終わった。


 夜8時過ぎに退勤し、いつもの本屋へ。

海炭市叙景 (小学館文庫)

海炭市叙景 (小学館文庫)

 10月6日発売と聞いていたが、その通りに並んでいた。

 それからこれも。

  • 『考える人』2010年冬号

考える人 2010年 11月号 [雑誌]

考える人 2010年 11月号 [雑誌]

 “福岡伸一と歩くドリトル先生のイギリス”。イギリスという言葉に弱いのです。買った途端に次号予告を見るのは悪い癖。しかも次号の“紀行文学を読もう”という特集の方が読みたいと思ってしまうのもどうかと思う。


 うどん屋に入って夕食をとりながら、「海炭市叙景」の福間健二氏の単行本解説と川本三郎氏の文庫版解説を読む。この短編連作長編には書かれなかった続きがあることを知った。


 帰宅後、昨日届いていた『彷書月刊』休刊号を取り出し、後の古書目録のページから石神井書林を探す。林哲夫さんが「dailysumus」で内堀弘さんの文章を褒めているのを見てすぐに読みたくなったのだ。掲載商品である寺山修司自筆草稿の説明から寺山を愛するお客さんの話になり、その話の終わりが『彷書月刊』の追悼になるという見事なもの。「ボン書店の幻」の読後感を思い出したような気持ちになった。


 その後に「海炭市叙景」から冒頭の「まだ若い廃墟」を読む。ああ、これが佐藤泰志なのか、「海炭市叙景」なのかと思う。山から下りてこない兄をただ何もしないで待ち続ける妹のその何もしないありようがなんとも心にしみてくるようだ。


 11月の新刊文庫の案内を見る。文芸文庫で上林暁が出たり、岩波現代文庫山口昌男内田魯庵山脈」が出たりと気になる本があれこれあるが、個人的にはこれが楽しみ。


 中野康司さんによるオースティン新訳シリーズもこれで最終か。また、あの世界に浸れるかと思うと心が温まる感じがする。


 それから三月書房のHPで山田稔さんのエッセイ集が編集工房ノアから出ると知った。これも待ち遠しい。