つぶやきジャレット。


 今日は午前中に野外仕事があるため、職場へ行く。


 もうすぐ秋の衣替えシーズンだというのにこの暑さ。「今日が今年最後の夏だ。この暑さを楽しもう」と誰にともなく言ってみるが、誰からの返事もなく、ただ汗が首筋を流れるだけだ。


 シャワーを浴びて服を着替え、午後2時前に退勤。このところ仕事の休みに実家に通っていたので、しばらくぶりにフリーの時間が手に入ったかたちになる。いそいそと神保町へ向かう。


 神保町に行く目的はアレコレあるが、まずはご無沙汰している丸香でうどんを食べようと店の前まで来るとシャッターが下りている。張り紙があって昨日今日と休業する旨が書かれていた。がっくり。


 先ほど来た道を戻ってさぼうる2でナポリタンを食べる。隣の女性2人のあまり心温まらない話が嫌でも耳に入ってくる中、ふと気づくと店内にアン・サリー「ハレルヤ」が流れている。おかげでささくれ立った心が和んだ。


 東京堂ふくろう店に行く。お目当ては『CABIN』12号と『HB』7号だ。この2冊を無事入手してからもうひとつのお目当て畠中さんの姿を探すが今日は見えず。お願いごとがあったのだがまた今度にする。


 続いて三省堂4階へ。ここでは『フリースタイル』13号を購入。この雑誌の楽しみは「one,two,three!」というコーナーで南陀楼綾繁さんを含む40人ほどの選者が本、漫画、音楽、映画などから自分のベスト3を選んで、コメント寄せている。この手の企画に目がないので毎号買ってしまう。ここでもお目当てのOさんの姿は見えず。お願いごとはまた次回に持ち越し。

 古書店街を流して田村書店の店頭へ。タテキンを漁っているとこれを見つける。

 これが上下2冊で500円。来月15日に創刊される筑摩選書の1冊である小谷野敦現代文学論争」がこの「近代文学論争」を意識したものになっているため、この2作品を読み比べてみたら面白いだろうと思い抱え込む。他には鶴見俊輔本が何冊も出ていた。店頭左隅の100円圴一段ボールには永井龍男本が数冊あった。荷物になるので買わなかったが100円は安いよ。


 いつものように喫茶ぶらじるで休憩。ブレンドを飲みながら早速『CABIN』から巻頭の岡崎武志「淋しい東京―夏目漱石『門』を読む」を読む。もう10年以上前のことになるが、毎年正月に実家へ帰省する折に漱石全集を1巻携え、正月番組に飽きた目と頭を休めるように読み進めたことを思い出す。「門」もそんな風に読んだ作品だ。岡崎さんは「門」の世界に小津安二郎映画との親近性を見る。この指摘が面白い。小津の撮る「門」は確かに観てみたいと思う。宗助は佐田啓二、お米はやはり原節子(岡崎さんは池部良淡島千景を想定)。弟の小六は土屋嘉男三上真一郎の間違い。黒澤映画と混同しました。)かな。他の登場人物を覚えていないのだが、加東大介杉村春子は欠かせないだろうと思いは膨らむ。


 ぶらじるから地上に出て、岩波ブックセンターに寄ってから日本特価書籍へ。大好きなみすず書房の“大人の本棚”シリーズの新刊が2冊出ていたので喜んでレジへ。このところの仕事と私事のストレス解消には好きな本を買いまくる以上のものはない。バイバイ、ストレス。

のれんのぞき (《大人の本棚》)

のれんのぞき (《大人の本棚》)

私の見た人 (《大人の本棚》)

私の見た人 (《大人の本棚》)


 帰りの車内で『CABIN』を読み継ぐ。田村治芳「がんがらがんのがん」、山田稔「生島さんに教わったこと」、田中美穂尾崎一雄と苔の道」など味のある文章が続く。


 電車を下りて、バスに乗り換える。紺色を濃くし始めた空に満月。



 帰宅し、コンビニで買ってきた『週刊文春』から小林信彦「本音を申せば」を読む。「谷啓さん急逝のショック」という追悼文。僕の大好きな火事場のエピソードは出てこなかったが、谷啓山下洋輔トリオのジャズセッションは是非音源を聴いてみたい。どこかでCD化してくれないかな。


 今夜はキース・ジャレットのスタンダーズを聴きながら買ってきた本や雑誌をあれこれつまみ読み。ライブ録音が多いスタンダーズの中でそのデビューを告げるスタジオ録音の2枚なのだが、やっぱりキース・ジャレットはつぶやきとも鼻歌とも奇声ともとれるものを振りまきながら鍵盤に向かい続けている。ご苦労さま。

スタンダーズVol.1

スタンダーズVol.1

スタンダーズ Vol.2

スタンダーズ Vol.2