触れるものみな懐かしい。


 仕事の合間に携帯でブログ散歩をしていたら、黒岩比佐子さんが中公文庫の新刊、北大路魯山人「春夏秋冬 料理王国」の解説を書いていることを知った。しかも、今月のちくま文庫の新刊でも「春夏秋冬 料理王国」が出たことも分かった。


 退勤後、本屋へ行き、さっそくチェック。

料理王国―春夏秋冬 (中公文庫)

料理王国―春夏秋冬 (中公文庫)

春夏秋冬 料理王国 (ちくま文庫)

春夏秋冬 料理王国 (ちくま文庫)


 なるほどありました。値段はちくま文庫が700円台で、中公文庫が600円台。違いはどこかと調べたら、中公版は同文庫の「魯山人味道」に収録したという理由で“お茶漬けの味”という一章が割愛されていた。ここは迷わず黒岩さんの解説が付いた中公文庫をレジへ。


 
 帰りのバスは柳家喬太郎「鬼背参り」を聴く。恋する男を失って死してついに鬼となる娘の姿にゾクリとする。喬太郎師匠の噺は、僕にとって当たり外れが大きいのだが、これは素直にすごいと思う。


 ポストに『彷書月刊』2月号が。特集“勝手ながら七痴庵戯文録”。ぱらぱらと雑誌をめくり、気になる文章をちょこちょこっと読む。土曜日に同級生と入ったPoemという喫茶店は確か田村治芳さんがその昔働いていたという店(以前にも日記に書いたことがあると思う)。岡崎武志さんが書いている豊川堂書店も学生時代何度か覗いた懐かしい店。なにやら今号にはいつも以上に懐かしいものが詰まっているような。


 「春夏秋冬 料理王国」から黒岩さんの解説を読む。魯山人が「弦斎の鮎」という文章で弦斎の鮎に対する知識を批判しているのは誤解であることを弦斎の文章を引用しながら明らかにしている。弦斎も喜んでいるだろう。


 テレビで「世界の車窓から」を観る。今月は英国編。列車はイングランドからスコットランドへ。エディンバラの街が映り、10数年前に上った小高い丘もそこにあった。汗をかきながら頂上まで辿り着くと、人影も少なく、犬を連れた地元の人と、旅行客らしき韓国人の女の子の姿しかなかった。彼らは今どうしているのだろうと思う。今日はなにやら触れるものみな懐かしく感じる日だ。