職場へ有休願いを出し、母校の大学へ向かう。今日は恩師の最終講義があるのだ。
車内では携帯本の大村彦次郎「文壇栄華物語」(ちくま文庫)を読む。しばらくこの本を持ち歩いているのだが、500ページ以上ある肉厚の文庫はなかなか読み終わらない。内容は面白いので読み終わらないのがちっとも苦にならないのがいいね。360ページをこえ、話はチャタレイ裁判とその後の伊藤整ブームへと進んでいく。
20数年前に通い慣れた商店街を抜け、大学のキャンパスへ。途中の豆腐屋が昔の少し首を傾げたような建物のまま営業を続けているのが微笑ましく、うれしい。
途中のラーメン屋で昼食。この店は学生時代にはなかったのだが、数年前に仕事でこの街に来た時に入ってみて、うまかったという記憶がある。味玉、チャーシュー、角煮をのせたスペシャルを頼み、豚骨スープがからんだ細麺を味わう。
大学構内に入ると前に来た時と風景が変わっている。新しくできた建物の1階に本屋があることを発見。さっそく入る。大学内の本屋らしく岩波文庫がずらっと並んでいるのはいいのだが、そこに全面ガラス張りの大きな窓から容赦なく陽光が降り注ぎ、肌色の背が白っ茶けているのが気になる。
この店の棚からこの本を見つける。
坪内祐三「考える人」を読んで以来気になっていた本。この本がまさか新刊で買えようとは。大学内のため1割引きもうれしい。
入ったことのない新しい階段教室にはまだ人もまばら。明るい午後の教室でぼんやりと待っていると大学の同級生が来る。数年ぶり。白髪が増えていた。講義開始直前にもう一人同級生(女子)が駆け込んでくる。この感じは20年来変わらない。
恩師が壇上へ。先生は昔とたがわぬペースで90分話続ける。飄々としたユーモアも相変わらず。同級生もアハハと笑う。
講義終了後、他の場所に座っていた同級生とも合流し、一緒に恩師と写真を撮る。その後、関東大震災前からあると言われている(?)一番古い校舎に入ってみる。学生の頃は何とも思わなかった昭和レトロな佇まいにため息が漏れる。ここの教室で近代文学の研究会をこのメンバーでやっていたのが昨日のようだ。段々気分が盛り上がってきて自分たちの溜まり場だった研究室があった棟の8階にエレベーターで昇る。まるでタイムマシーンに乗ったかのようにあの頃がよみがえってきた。
大学時代によく行ったポエムという喫茶店で数年ぶりの再会を祝す。今ここにいるメンバー以外の同級生たちも含め、いろいろなことがあった。それでもこうして会えることを喜ぶ。なんだが気分が軽くなり、やる気が出てくる。
同級生たちと別れ、懇親会に出席する。研究会時代の先輩たちと再会。先輩の一人から「大人になったねぇ〜」と言われる。そりゃもう40半ばですから。
地元に戻り本屋へ。今日の講義で配られた資料に載っていた恩師の著作目録抄を見ていた影響でこれを買って帰る。
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 講談社
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