明後日に向かって撃て。


 相変わらず仕事はバタバタと過ぎて行く。


 人影も少なくなった職場で休日をはさんだ明後日に向かってメールを送る。明後日の朝にPCを開いた同僚たちのうんざりした顔が目に浮かぶ。


 本屋に寄る。『ユリイカ』のクリント・イーストウッド特集が気になる。「チェンジリング」を観られなかった。「グラン・トリノ」も観ずに終わりそうだ。



 桂米朝「つる」を聴きながら帰宅し、『週刊文春』に目を通していると電話が鳴る。もう夜の10時半だ。誰だと思って受話器を取ると妙に甲高いハイテンションの親不孝声。「わたくし×××の○○と言いますが、ただいま賃貸住宅に住んでいる方と住宅についてお話をさせていただいてるんですよ」とのたまう。知り合いでもないものがこんな時間にわけのわからん電話をかけてくる非常識なやつとまともに話をする気は起きない。「こんな時間にどういう御用件でしょうか?」と聞くと、「いやぁ〜、実は今日7時と8時にお電話したんですが御留守だったので今かけているんですよ」とまるでその時間にいないこちらが悪いみたいな言い方だよな。「仕事で今帰ってきたのですが」と言うと「私も残業を終えて帰る前にもう一度電話をかけたんですよ」という答え。なんでこっちがあんたの残業に着き合わせれるような電話に出なければならないんだよ。残業してたのはそっちの都合だろう。「住宅にも興味がありませんし、お話しする気はありません」と言って切ろうとすると受話器の向こうから「あなたは何か誤解されているようですが……」という声がする。例え誤解であってあんたが僕の子供のころに離れ離れになった兄弟だったとしても、話す気はないよと思いつつ受話器を置く。するとすぐに電話が鳴る。しつこい奴は嫌いだよと思いつつ電話のコードを差し込みから抜く。