茄子を養子に。

 昨日働いたので、今日の仕事は昼まで。


 丸香のうどんが食べたくなり、神保町へ。肉うどんという新しいメニューができたと聞き、それを食べてみたいと思っていたのだが、店頭にすでに「肉うどん売り切れました」の張り紙が。残念。


 釜たまに野菜天とごぼ天を頼む。野菜天の中身は茄子、さつまいも、インゲンの三種類。おお好きな茄子が入っていると喜んでいると後から入って来た隣の女性二人組のひとりが「あの、野菜天から茄子をとってください」と店員に言うではないか。「アレルギーですか?」と問う店員に「はい」とあっさり答える女性。茄子アレルギーなんてあるんだね。でも、自分が食べられないなら相方の女性にあげればいいのに。もし、二人ともいらないのなら僕が養子にでももらいますよ。


 悠久堂の店頭ワゴンで気になっていた文庫本を2冊見つけた。安藤鶴夫「巷談 本牧亭」(河出文庫)とイーヴリン・ウォー「回想のブライズヘッド 上」(岩波文庫)。実は、安鶴本は旺文社文庫を、ウォー本は吉田健一訳のちくま文庫を持っているので、新刊で買うのをためらっていたのだ。


 東京堂の3階に行く。今日の目的はここで『大阪人』3月号の“続々古本愛”と扉野良人さん他によるミニコミ『ドノゴントカ』創刊準備号と南陀楼綾繁さん編集の「ベスト・オブ・谷根千」(亜紀書房)を手に入れることであったのだが、ミッション無事終了。仕事で忙しい畠中さんに目礼して1階に降り、書棚を見ているとワザワザ畠中さんが『雲のうえ』10号を持って来てくれる。うれしい。この人柄に魅かれて僕たちは3階まで階段を昇るのだ。

ベスト・オブ・谷根千―町のアーカイヴス

ベスト・オブ・谷根千―町のアーカイヴス



 三省堂の4階に行く。書棚を覗きこんでいるとOさんが声をかけてくれる。気になっていることを尋ねると、思いがけない答えが返ってきてちょっと心配になる。
 友達へのプレゼント用にすでにサイン本を持っている武藤良子「大阪京都死闘篇」(わめぞ文庫)を購入。こちらにはまだ数冊在庫があるようだ。


 いつものように伯剌西爾ベイクドチーズケーキ(おいしい!)を食べながら今日の収穫である本や雑誌を読む。『雲のうえ』に載っている食べ物の写真のウマそうなこと。今度風邪などで食欲のない時にはこれを見ようと思う。『大阪人』の充実、『ドノゴントカ』の瀟洒、「ベスト・オブ・谷根千」の多彩を味わう。


 行き帰りの車中は堀井憲一郎「落語の国からのぞいてみれば」(講談社現代新書)を読む。「若者殺しの時代」の時もそうであったが、この人の書くものは信用できる。何よりも自分の足で稼いだものを元手に書いているのが分かるからだ。実際に日本橋から京都三条大橋まで歩いた経験をもとに江戸時代の東海道の旅について書いた人は何人もいまい。


 家で読了。巻末の参考文献解説と登場落語解説もすべて目を通す。この2つだけでも十分面白い読み物になっている。


 西村賢太「暗渠の宿」(新潮社)から「けがれなき酒のへど」を読む。ひたすら恋人になってくれる女人をもとめ苦悩する主人公と先ほどまで読んでいた堀井本に出てきた江戸時代の早く結婚しなければいけない社会に生きる好き嫌いで生きられない人々との懸隔に感慨深いものがある。