無理をする茄子。


 職場に日生のおばちゃん2人が来る。1年前に来た茶髪の女性が昨年の秋にやめてしまったとのことで(理由は不明)、代わりの女性が来た。単なる挨拶かと思ったらそんなわけではなく、新しい入院特約ができたからそれに契約を変更しろという話。


 当然、変更すればこんなに便利になるし、御客様の利益にもなるという点を力説する。こちらも子供ではないので、この不景気に保険会社が利益を吐き出して、契約者のために保障を厚くするなんて思っていない。実際問題として契約料が1000円近く上がるわけだし。


 今度の特約では、これまでの契約が88種類の医療行為にしか対応していなかったのに対して1000種類の医療行為に対象を拡大すると誇らしげにおばちゃん2人は力説する。そこでこの春に歯医者から勧められている親知らずを抜く手術が対象となるか聞くと「対象外です」の答え。人間が生まれて死ぬまで受ける医療行為がはたして1000種類もあるのかという疑問とともに、親知らずを抜くという決して珍しくはない医療行為の該当しない1000種類ってどんなもんなんだとちょっとあきれる。


 とりあえず、資料だけ受け取って面談を終えた。


 帰りの本屋で『モンキー・ビジネス』4号(“少年少女号”)を買う。岸本佐知子さんの連載「あかずの日記4 八月タカシ」を称賛する意見を目にしたので読んでみたくなった。


 駅ビルの杵屋に入っていつもの茄子天生醤油うどんを頼む。書店の袋から『モンキー・ビジネス』を出す。このサイケと言おうかパステルと言おうかの派手なデザインの表紙がちょっと恥ずかしい。この雑誌を知らない人から見たら、このおやじ歳も考えずなに読んでんだよと思われそうだ。
 岸本さんの日記を読む。傑作。内容もさることながら「瀬戸内ジャクソン」や「荒川アラパカ園」といったフレーズに心ふるえてしまう。


 岸本日記を堪能したので茄子天生醤油うどんを食べる。去年の秋に新メニューとして登場した時はあんなに大きくて食べごたえのあった茄子が、今は小さくしょんぼりとしている。旬を大幅に過ぎてそれでも定番メニューとして頑張ろうとする茄子がすいぶん無理をしているのではないかと思う。


 帰宅して、小田光雄「古本探究」、堀井憲一郎「落語の国からのぞいてみれば」を読む。