情実の実は苦い。

 突発的な会議が行われ、次の仕事までに終わらずに中座し、帰ってくると終わってしまったその会議によって発生した次の突発的な会議に呼ばれてまたそれが終わらず、中座して戻ってくると……。


 何年も前にある人がかけた情けが、このように後に残った者たち(僕もそのひとりであるが)の上にマイナスとしてのしかかっているのを見ると、情実の実は苦いと思わざるを得ない。




 本屋へ寄り、中上健次紀州 木の国・根の国物語」(角川文庫)と坪内祐三「考える人」(新潮文庫)を買う。
 中上本はあさのあつこ文庫編集長のセレクトによる復刊。ちゃんと新しい解説を付けて改版として出しているのがえらい。この文字の小ささがなんとも昔の文庫を思い出させる。

紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)

紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)

考える人 (新潮文庫)

考える人 (新潮文庫)

 
 昨日この街で一番古い家系ラーメン店に行ったことで、とりあえず僕のラーメン屋探訪は最終回を迎えたはずなのだが、天然素材系ラーメン屋が職場の関係者の実家であることが分かり、「ぜひ、贔屓にしてやってください」と同僚に言われたので、素直にまた行ってみる。前回は量的にも物足りなかったため、店の張り紙にあった「ラーメンのスープをご飯にかけてお召し上がりください」の言葉に従ってライスを注文しようとしたら、僕の前の客に対して「ライスは本日終わりました」と言っているのが聞こえた。それなら一日限定20食の豚骨スープを試してみようと注文するも「これも終了」とのこと。ネギチャーシューラーメンを食べておとなしく店を出る。やはり、さしておいしくなかったなあと先ほどの味を反芻しながら歩いていると、考えてみればラーメンを食べて他の好きな食べ物と同じように「おいしい」と感じたことがないことに気づく。


 帰りのバスは柳家小さん「道灌」。