仙台にVANだい。


 ホテルを9時にチェックアウトして仙台駅に向かう。


 駅で帰りの新幹線のチケットを確保しておこうと思ったのだが、コンピュータートラブルで長野、東北、山形の各新幹線が運休していることを知る。もちろん、チケット発売も中止だ。午前中には復旧の見込みということなので、昼にまた来ることにしてバスで10時開店の萬葉堂書店鈎取店へ向かう。

 駅前の8番のバス乗り場から秋保温泉方面のバスに乗る。30分ほど乗ると「鈎取」というバス停に到着(他にも「鈎取××」といったバス停があるので注意)。バス代370円。目の前に萬葉堂書店があった。黒っぽい本が多いと聞いている地下に入る。なるほど、絶版文庫、新書、単行本、漫画、雑誌などぎっしり詰まっている。


 ただ、人気のない(僕のほかにはおじさんが1人いるだけ)地下は底冷えがして本に集中しづらく、だんだん下腹が痛くなってくる感じだったのでさっと見て2冊選ぶ。


 庄野本はロンドン紀行。作家のロンドン滞在記をゆるく集めているので。


 1階も見て回る。こちらは暖房がきいていてゆっくり棚を見られる。全体的に白っぽい本、新しい本が多い。掘り出し物を求める人にはあまりおいしくないかもしれない。ただ、文庫はすべて定価の半額なので、昔の薄い絶版中公文庫などを探すにはいいかも。


 1時間ほどで店を後にし、バスで駅に戻る。新幹線は復旧していた。夕方5時半のはやてを押さえる。これで安心して古本屋めぐりができるというものだ。


 歩いて火星の庭へ。魚雷さんがいた。カレーとアイスチャイを頼み、昼食をとる。カレーは昔懐かしい黄色をしているのだが、味はスパイシーな本格派。おいしい。
 そこへ、岡崎さん、退屈男さんたちが来店。岡崎さんは東北大学近くの本にゃら堂と駅前の古書市に行ってきたとのこと。退屈さんは昨日話題になっていたおいしいピザ屋で昼食を済ませてこの店に。それぞれ仙台を満喫しているなあ。


 火星の庭の前野さんが車で岡崎さん、魚雷さんと僕をブックカフェのマゼランに連れて行ってくれる。通りから奥まった場所にあり、店の前のスペースに箱を出し、本を置いている。このスペースで小さな一箱古本市ができますねと岡崎さんと話す。店内に入ると、文学、語学、美術、映画、建築などジャンル別にバランスよく良書が集められている印象。

  • 谷川徹三「自伝抄」(中公文庫)
  • 高野文子「ラッキー嬢ちゃん あたらしい仕事」(マガジンハウス)


 その後、在来線で帰る岡崎さんと駅前で別れ、前野さんの車で「S」に連れて行ってもらう。1階におにぎり屋が入っているカステラのような薄べったいビルの2階に「S」はあった。小さな部屋に吟味された本がキレイに並んでいる。それに値付けが良心的だ。


 個性的な店主の方が300円値引きしてくれた。仙台に来たらぜひ寄りたい店だ。



 その後、3時20分の新幹線で帰る魚雷さんを送る前野さんの車で東北大学近くまで連れて行ってもらう。その途中にヴァンヂャケットのお店を発見する。VANshopが仙台にあるなんて。今都内でもVANshopを見かけることはまずない。浜松町駅近くの倉庫での単発的なファミリーセールは行われているが、ほとんどショップ展開をしていないのだ。前野さんの話だとどうやらオーナーが個人的に仕入れてやっている店らしい。今度仙台に来た時はぜひ寄ってみたい。


 大学近く車を降り、お二人と別れる。前野さんにはいろいろとお世話になってしまった。仙台の本屋と本に関わる人たちを盛り上げようとノンストップで動き続けている前野さんにはぜひ頑張ってほしいと思う。また、企画している仙台でのイベントが成功してほしいものだ。時間が合えばまたそのイベントに合わせて仙台に来てみたい。


 京の午前中に岡崎さんが行ったという本にゃら堂に行く。名前の印象とは異なり、昔ながらのスタンダードに徹した店だ。店主はまだ若い方なのだが、浮ついたところのない雰囲気が漂っている。

  • 堀武昭「オーストラリアA to Z」(丸善ライブラリー)
  • 「紙上のモダニズム 1923-30年代日本のグラフィック・デザイン」(六耀社)

 並びの古本屋をのぞいてから駅前の古書市でものぞいて帰るかと思ったのだが、4時近くなり小腹がすいてきた。新幹線に乗り込む前に腹ごしらえをしておこうと今日そのおいしさを聴いた定禅寺通にあるピザ屋に行ってみようと歩き出す。北の街らしく雪を避けるように広々としたアーケード街が縦横に走っていて冷たい冬の風から身を守ってくれるので歩きやすい。

 地図と耳にはさんだ情報を頼りに店の前まで辿り着く。するとそこには「5時半からオープンします」の札が。どうやら昼営業が終わり夜営業までの休み時間になってしまったらしい。5時半ではもう新幹線の中だ。また今度の来た時の楽しみにしようとあきらめる。


 それなら、昨日一切れだけ食べてその肉厚とうまさに唸ったとんかつ屋の岩松に行ってとんかつ定食を食べてやれと思い直し、昨晩の記憶を辿って店の前へ。暖簾はかかっていれども店内は真っ暗で人影もない。ここも休みか。


 駅へ向って歩いているとモスバーガーがあったので入る。最近売り出し始めた国産牛肉を使ったモス史上最高のバーガーとやらを食べる。ピザととんかつへの期待値が高かったためか、特別おいしいとは思わなかった。まあ、マクドナルドが最近出したヤツに比べれば問題なくうまいのだが。


 ぶらぶらと駅に戻るとちょうどいい時間になっている。自分用にずんだ餅を買って5時26分発のはやて22号に乗り込む。ホームで待っている時に、はやて22号の到着が遅れるとのアナウンスが入り、もしかしてこの期に及んでまた新幹線がトラブルかと心配したのだが9分遅れで無事出発。

 車中は浅生ハルミン「ハルミンの読書クラブ」(彷徨社)を読む。毎回本をあげてそれについての感想を書くスタイルなのだが、関係あるようなないような子供のころの思い出などがちょこちょこと語られたりするのも面白い。ハルミンさんが書けなかった時に連載誌『彷書月刊』の編集長・田村治芳さんが浅生ヨシミン名義で書いた原稿も読んでみたかったな。東京到着前に読了。


 東京駅で下車して、八重洲地下街へ。R.S.Booksに寄る。めったに東京駅には来ないのでこの機会にのぞいておこうと思ったのだ。ずいぶんオシャレな雰囲気の店だな。出たばかりの新刊本が安く出ている。期待していた文庫本は見当たらなかったが、代わりにこれを買う。

 古本屋では珍しく、カバーをかけた上で、栞を挟んでくれた。


 帰りの車中で「ずばり東京」から『古書店 頑冥堂主人』の章を読む。これは開高氏が古書業界に取材したルポルタージュ三島由紀夫「永すぎた春」よりも古書市場の様子が詳しく書かれている。弘文荘・反町茂雄氏も登場する。


 地元の本屋で新刊をチェックしてから帰宅。