年の瀬に背を向けて。


 仕事を終えて本屋へ。

  • 『en−taxi』vol.24

 特集は、芥川賞と銀座。


 ちょっと寄り道してから帰宅。

 もったいなくて残しておいた「立川談志談春親子会in歌舞伎座」から談春「芝浜」を視聴。

 「芝浜」のアポリアとして魚屋が実際に行った芝の浜辺で財布を拾ったという事実を夢であると女房が信じ込ませることが現実に可能なのかという点がある。談春さんはこれに徹底的にこだわった。財布を拾って大喜びで仲間と飲み食いした魚屋を起こす前に嘘をつく覚悟を決める女房の表情から始め、僕がこれまで聞いた「芝浜」で一番嘘を納得させる会話に時間と手間をかけていた。そして嘘をついている女房の苦しみをその仕草と表情で何度も表現する。魚屋としての成功と新年を迎える晴れがましさというこれまでの「芝浜」の売りを犠牲にしても、女房の嘘をついていたことの苦しみからの解放と夫への愛情をより強調したかったのではないかと思えるサゲまでの持って行き方を味わいながら、誰の「芝浜」でもない談春の「芝浜」を演じているのだなあと思う。

 

 『en−taxi』から冒頭の坪内祐三×佐伯一麦「『芥川賞を取らなかった名作』たちを巡って」という対談を読む。芥川賞を取らなかった作品の中ですぐれたものの一つとして佐藤泰志きみの鳥はうたえる」をお二人が挙げているのが印象深い。そして坪内さんが評価する芥川賞落選作品である富士正晴「競輪」が採録されているのも興味深い。

 来年1月に朝日新書で出るという佐伯一麦芥川賞を取らなかった名作」が楽しみになった。


 佐伯さんは仙台にゆかりのある作家。今度の日曜に仙台に行くので、その偶然を心地よく思える。今日仙台は雪が降ったらしい。日曜はどうだろう。


 このところブックオフなどで買ってきてあった本の値札をはがす。年も暮れようとしているのになにをやっているんだろう。ああ、年賀状書かなきゃ。