三階に紙なし。

 今日は都内へ出張。しかも神保町から歩いていける場所なのだから気分も軽い。


 仕事は午後からなのでゆっくり家を出る。昼食に何を食べようかと考えながら駅へ向かうバスの中で携帯ブログ散歩。「yomunelの日記」で“さぼうる”のナポリタンが出てきたのを読んで、それに決めた。


 神保町の駅を出るとザアッと雨。駆け込むように“さぼうる2”へ。ひとりだと告げると「相席になります」と言われる。満席ならしょうがないかと見ると空席が結構あるじゃないか。大きなテーブルはグループ客用に取っておくつもりなのだろう。狭い席で料理を待っている若い男性の席に案内される。この店のテーブルは狭いのでなんだか相手に申し訳ない。空いているテーブルに案内されて、他の席が埋まっているため相席になるのはなんとも思わないが、まだ空いているテーブルが2つ以上あるのに狭い相席を命じられると「この店は客のことをこの程度にしか考えていないんだな」と思ってしまう。相手に気を使いながらお目当てのナポリタンを食べる。好きな味なんだよな。昼の稼ぎ時なのはわかるのだが、もう少し接客がよければなあと思いつつ店を後にする。



 午後からの仕事は予定よりも早く終わり、またもや神保町に戻る。


 まず、東京堂の3階へ。畠中さんの姿は見えず。フリーペーパーの『週刊三階』も見当たらず。

  • 『ほんまに』vol.8
  • 『dioramarquis 02』

 前者は神戸・海文堂書店が出しているミニコミ。後者は大阪・アトリエ箱庭が出しているミニコミで、特集が“プラトン社 大大阪モダニズム出版社”。


 1階に下りて2冊。

 前者は湯川書房特集。後者はサイン本。そういえばサイン本棚にある内堀弘「ボン書店の幻」があと1冊になっていた。味わいのあるサインなので欲しいなとは思ったのだが、今カバンに入っている本を買うのもどうかと思いとどまる。


 雨も強いので伯剌西爾でひと休み。


 先ほど買った『spin 04』から山本善行さんの「湯川成一さんの思い出」と中島俊郎さんの「オックスフォード古本修業」を読む。


 伯剌西爾を出ると雨がやんでいた。いつものように日本特価書籍へ。

フランク・オコナー短篇集 (岩波文庫)

フランク・オコナー短篇集 (岩波文庫)

澁澤龍彦書評集成 (河出文庫)

澁澤龍彦書評集成 (河出文庫)


 帰りの電車で携帯本の「ボン書店の幻」を読み継ぐ。ボン書店店主の鳥羽茂が人知れずどこかの土地で命を落としたその消えた消息に思いをはせる終章を読み終わり、「文庫版のための少し長いあとがき」を読み始めて、車中であるのに腹の上あたりから感情が上のほうにグッとこみあげてくるのを感じてしまう。あと数頁で読み終わるのだが危険を回避して本を閉じる。


 駅からのバスを途中下車して床屋により、散髪を終えて隣の中華料理屋で夕食。以前にここで食べた海老チリチャーハンがおいしかったのでまた食べてみる。料理を待つ間を使って先ほどの続きを読もうとするが最後のページでまた警戒音を感じて閉じてカバンにしまう。


 家に戻り、心おきなく読了する。解説の長谷川郁夫さんによる〈(前略)この度新たに書き下ろされた「文庫版のための少し長いあとがき」を読んで、途中で思わず目頭が熱くなったことを告白しなくてはならない。巧すぎるよ。内堀さん!〉という表現に僕の思いも尽きている。
 いつもあとがきを先に読むタイプなのだが、今回は読み始めてすぐにためらうものを感じて本編を先に読み始めたのだが正解だった。先にあとがきを読んでしまったらこれほどの感興を感じることはなかっただろう。内堀さんの綿密で適度な距離感のある目と文章で描き出された孤独で不思議なボン書店店主の人生を辿った後に広がる鳥羽茂終焉の地の風景のなんと寂しく懐かしいことか。
 いいものを読んだなあ。それにしても東京堂でサイン本を買ってこなかったことが悔やまれる。2冊持っていても全然かまわない本だ、これは。

ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫)

ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫)


 その後、今日買ってきた本や雑誌をいろいろつまみ読み。


 この週末は1泊の出張だ。携帯本は何を持って行こうかな。