グリーン車で子供。


 朝、職場にあった『中央公論』最新号を手に取る。おお、古本特集号ではないか。岡崎武志さんをはじめ、四方田犬彦福田和也とそうそうたるメンバーを揃えているのだがいまひとつパンチがないように感じるのは、消え行こうとする雑誌であるという先入観によるものか。


 定時に職場を出て埼玉県に向かう。職場関係のお通夜があるのだ。湘南新宿ライナーに揺られて埼玉の奥へ奥へ。携帯本の戸板康二「思い出す顔」(講談社文芸文庫)の残りを読みながら。


 水田の中に突如出現したような斎場で焼香をすます。会葬御礼の品はもらわずに外へ。自分の父の葬儀を経験して葬式というものがいかに金のかかるものであるかを知っているし、お礼の品は余れば葬儀社へ返品可能なので出た数の代金だけ払えばいいことも知っているから、すこしでも同僚の金銭的負担を減らせればそれにこしたことはないと思うからだ。


 帰りは横浜の先まで帰る同僚に誘われて湘南新宿ライナーグリーン車に初めて乗る。グリーン券のデーターを機械でSuicaの中に入れてしまうため、紙の券など出てこないことを知る。グリーン車の座席上にタッチパネルがついており、先ほどのSuicaを近づけると赤いランプが緑に変わり、先ほど買ったグリーン券の範囲を過ぎない限りもとの赤には戻らないシステムに驚く。はじめてのことが多く、グリーン車の中で子供のようにはしゃいでしまう。今読んでいる戸板康二に「グリーン車の子供」という中村雅楽シリーズの1篇があるが、これじゃグリーン車の中で子供だ。


 同僚と別れ渋谷で下車。電車を乗り換える。そこからの電車とバスは古今亭志ん朝「錦の袈裟」「へっつい幽霊」「試し酒」を聴きながら。三つの噺の一番晩年に近い講座である「試し酒」のまくらで見せる伝法な調子についつい引き込まれる。


 今日メールで友人が近々にアフリカのガーナへ行くということを知った。
 ふと思い出して「Appoinotment In Ghana」を聴く。