ピットロッホリーの蜂。

 
 締め切りが迫った仕事をあれこれと片付ける。残すは明日閉め切りのレポートなのだが、なかなか筆が進まず、家に持ち帰ることにする。


 持ち帰りの仕事を抱えていても本屋に足が向いてしまう。


 特集が“漱石ーロンドン、中国などで何が起こったか”。収録されている論考の題名に「ロンドンの漱石、帰ってきた漱石」などとあると、10年ほど前に漱石の英国留学の足跡を辿る旅をしたことのあるこちらとしては見逃せなくなってしまう。
 「夏目漱石岡倉天心」という文章では、漱石スコットランド行きの話題に触れている。当時漱石が滞在したピットロッホリー(漱石の表記ではピトロクリ)のディクソン邸は現在ダンダーラックホテルになっており、僕も2晩滞在した。漱石が歩いたキリクランキーの渓谷をスコットランド独特の黒く色づいた川の水を眺めながら歩いた夏の日を今でもよく思い出す。その時僕は英国留学した漱石と同じ歳であった。連れもなくひとりで歩いた。それを哀れんでくれたのか、この小さなスコットランドの村にいる間、蜂が一匹、ずうっと耳に羽音を聴かせながら僕の後を追って飛んでいた。



 帰宅後、サッカー日本代表パラグアイ戦後半を観つつ夕食をとり、その後レポートに取りかかり1時間ほど唸ってから投げ出す。後は明日だ。


 扉野良人「ボマルツォのどんぐり」から「辻潤と浅草」を読んだ。