漱石が読む「坊ちゃん」。


 来週に迫った2つのイベントの準備作業がまるで混線した電話の音声のようにオーバーダビング状態で絡み付いてくる。預かった会費がどちらのイベントのものであるのか一瞬わからなくなったり、旅行業者とAのイベントの話をしていたかと思うと、ホテルの営業マンからBのイベントのことで電話がかかってきたりする。

 とりあえず、Aのイベントの宿泊先の部屋割りを完了し、続いてBのイベントの式次第を載せる案内状の素案をまとめたところで今日は店じまい。置手紙のように全同僚に社内メールを2通送信してから職場を後にする。


 外に出た途端に雨が降り始めた。本屋へ。


 文春文庫の新刊が出ている。何冊か気になる文庫はあるが、今日はこれを。

  • 高尾慶子「ぼやきつぶやき イギリス・ニッポン」(文春文庫)

 僕は、以前からこの高尾さんの「イギリス人はおかしい」シリーズの愛読者なのだが、先日友人もこのシリーズを愛好していることを知った。そこで、この文庫書き下ろしのシリーズ最新刊を読み終えたら、友人へ送ることにしようと買っておく。


 雑誌棚で『文学界』最新号をチェック。大座談会が今月の目玉。参加人数は両手で足りないくらい。筒井康隆氏から川上未映子氏までの老若男女入り乱れての豪華版だ。まとめ役は高橋源一郎氏。高橋氏は先日の外市にも姿を見せ、本を買っていったとのこと。残念ながら僕はその姿を目撃していないが。


 帰宅後、持ち帰りの仕事を1時間ほどした後、「文学鶴亀」をちびちびと読み進める。吉田健一年譜や「三省堂国語辞典」といった武藤さんおなじみの話題が次々と顔を出す。そのなかで朗読についてもかなりの分量が割かれているという印象。武藤さんが朗読会に何度も足を運んでいる幸田弘子さんの本を1冊持っていたはずだがなと思いながら読み進める。
 アメリカでは作家による自作朗読の会が書店などでよく行われると聞く。近年日本の作家も同様の会をするようになったらしい。作家の自作朗読で言うなら、漱石による「吾輩は猫である」と「坊ちゃん」を是非聞いてみたいものだなと思う。もちろん、そんな音源が存在することはないだろうが。