人の1番を笑うな。


 本日は隣りに住んでいる同僚とともに野外出張にでかける。例年この出張は寒いことが多いのだが、今年は天気がよく気温も高い。ありがたや。


 仕事を終えて、支給された食券でカツカレーを食べてから現場を後にする。


 電車を乗り継いで新宿へ。ちょうど観たいと思っていた2本の映画が同じ新宿武蔵野館で上映されていることを知りやってきたのだ。


 まずは2時からの山崎ナオコーラ原作・井口奈己監督「人のセックスを笑うな」を観る。永作博美松山ケンイチ蒼井優の3人がいい。映画と言うのは役者の肉体(容姿や雰囲気などをひっくるめて)によって大きく規定されているものなのだなあと実感する。それだけ永作博美に存在感はあったし、松山ケンイチの体のラインには若者にしか出せない固さと細さが表れていたし、蒼井優の姿にはどうしても消し去れない幼さの印象が滲んでいたように見えた。

 この作品には“間”の感覚があり、それが味わいとなっていると思う。例えば、永作博美の作品展に招待された蒼井優が長椅子に腰掛けたまま画面左から右に移動しつつ、そこにあるお菓子を食べつづけるシーン。僕は好きなのだが、この感覚をかったるい、思わせぶりと受け取れてしまう人には向かない映画かもしれない。
 3人とも素晴らしいのだが、やっぱり永作博美恐るべしですね、北條さん。


 続いて5時20分からの「Mr.ビーン カンヌで大迷惑」を観ることに。待ち時間が30分ほどあったので紀伊国屋書店本店をサッと覗いてからまた戻ってくる。2時の「人のセックスを笑うな」を観る時に同時に購入した整理券なので入場番号が1番になっている。この作品にそれほど入れ込んでいる訳ではないのにこの1番はちょっと恥ずかしい。10番以内までの番号が入場できるようになってもすぐには入らず、なるべく後の方で入場した。観客が先程の「人のセックスを笑うな」と明らかに異なり、年齢層も高くなっている。今の若者はMr.ビーンを知らないのかもしれない。
 僕は英国好きなので、ロンドン郊外の何の変哲もない街が出てくるテレビ番組版「Mr.ビーン」が好きなのだが、アメリカを舞台とした前作の劇場版ははっきり言ってつまらなかった。英国の寂れた街との雰囲気とモンティパイソンの流れをくむブラックなユーモアのエキスが薄められて安手の笑いと涙と感動の平凡なコメディ映画にしか思えなかった。
 そんなわけで期待しないでみたのだが、前作よりはかなり楽しめた。細かいギャグは以前のネタの使い回しが多いため新鮮味はないが、久しぶりの主演にローワン・アトキンソンががんばっているなと思えるシーンがいくつかあり、印象は悪くない。見どころのひとつは旅費欲しさに流れる音楽に合わせて当て振りをするシーンだろう。古いギャグだが、丁寧に演じていた。
 また、この作品を前作より面白くしているのが、映画監督役のウィレム・デフォーの存在だ。自作自演映画にうっとりするダメ監督を怪演し、主役のビーンをくっているとも言える活躍だ。
 個人的には、ヒッチハイクをするためにビーンが立っていた菜の花畑の道路のシーンを観ていると、その風景になにやら心落ち着くものを感じた。


 武蔵野館を出てジュンク堂へ。7階の読書論の棚を見ていたらこれがもう面出しで並んでいた。


 石丸澄子さんの装幀がいいですね。ベストセラーを扱っていても古本オーラが満開という感じ。


 その他8階で、地元の本屋では川上未映子人気で売切れてしまったこれを買う。

 芥川賞受賞第1作掲載だ。


 帰りの電車で早速「ベストセラーだって面白い」を読み出す。ベストセラーと呼ばれる本をほどんど読まないため、どんな本であるのかを知るだけでも面白い。とりあえず、“診療室篇”まで読んだ。様々な書店でのベストセラーに基づいて本をとりあげているため、普通の書店では決してベストセラーにはならないものも対象となり、単なるベストセラー本にならないように注意が払われているのがわかる。それぞれのベストセラーを書店とからめて岡崎さんがどう料理していくかを楽しみながら読むことにする。


 9時半過ぎに帰宅。今夜8時から放送された「鞍馬天狗」の録画予約をし忘れたことに気づく。残念。