口の中に歯医者。


 遅番なので8時近くまで寝ていた。とにかく寝られることがうれしい。


 今日も歯医者へ行く。ここの待合室には雑誌と何冊かの本が置いてあるのだが、以前から気になる1冊が。長谷川町子「エプロンおばさん」やPHP文庫の言葉遣い辞典に挟まれて澁澤龍彦「世界悪女物語」(文春文庫)が置いてあるのだ。どう見てもこの場所に不釣り合いなこの1冊を誰が持ち込んだのだろう。澁澤ファンの歯科衛生士の女性でもいるのだろうか。


 治療を終えて職場へ。30分は食事をするなと言われたので1時期間後に昼食をとり、歯を磨いていると先程詰めてもらったセメントがポロリと落ちた。口の中には詰め物のフタがなくなったため、仕込まれていたはずの薬の匂いがぶわぁ〜っと広がる。こうなると何を飲んでもうまくない。口内に歯医者が引っ越してきたようなものだ。


 8時過ぎまでいて退勤。本屋へ。


 文春新書の新刊が並んでいた。待っていたこれを購入。

 約380ページの分厚い1冊。以前にこの日記にも書いたが、この「奇人」山田一郎に関する連載を高島さんが『ノーサイド』でやっていてそれが雑誌休刊によりそのままになっていたと僕は思っていたのだが、“あとがき”を読むとその後舞台を『文學界』に移し、連載は完結していたとのこと。ただ、『ノーサイド』連載分を書き直して一から『文學界』で連載し直したため、『ノーサイド』に書いたものを生かしつつ、『文學界』連載分といかに繋げるかという地点でそのまま埋もれてしまっていたらしい。それがやっとその気になった高島さんによって10年の時を経て日の目を見たというわけだ。うれしいね。


 それから2月25日には同じく『ノーサイド』での連載を中心にした武藤康史『文学鶴亀』(国書刊行会)も出る。にわかに活況をていした『ノーサイド』本に目尻が下がりっぱなしである。


 そうそう、新刊と言えば岡崎武志さんの新著「ベストセラーだって面白い」(中央公論新社)も今週末には書店に並ぶらしい。これも楽しみ。


 しかし、読まなければいられない本がこう立て続けに出ては体が持ちませんよ。ねぇ。


 Q.B.B.中学生日記」(新潮文庫)読了。
 男子しかいない私立中学校の話なので、公立の共学校にいた中学時代より、私立の男子高にいた高校時代を思い出す。男って中学生でも中年になっても、単純で馬鹿でどこか夢を見ているのだ。体の匂いの染み付いたパッツンパッツンになった制服の感触を思い出した。