こんな少女が5万人。


 今日は休日なのだが、溜まった仕事を片付けるため職場へ。

 
 駅へ向かうバスの中で中学生くらいの女の子と母親の会話が聞こえてくる。
 少女曰く、

「私を本屋で放っておいてくれたら、一日中でもいられるわ。大好きだもの。」

 こんな少女が5万人もいれば、書店や出版業界はずいぶんと助かるだろうな。だって、その子に気に入られたい男の子も本屋に足を運ぶようになるだろうし、将来お母さんになった彼女は率先して子供に本を読ませるだろうから。
 もっとも、一日本屋にいるだけで1冊も買わない少女が5万人も増えたら、逆に困るだろうけど。


 机の上に電卓、領収書、出納帳などを広げて4月から今月までの経費立て替え分の清算をする。職場のシステムが変わり今年度の経費請求はこの9月までできなかったのだ(このシステム変更には僕も一枚かんでいるため文句は言えない)。作業を終えてその金額に驚く。〆て27万円だよ。“塵も積もれば山となる”を実感する。まるで利子の付かない積立貯金をしていた様な感じ。請求の手続きを済ませた。これで今月末には我が手に戻ってくるぞ。


 夕方退勤し、歩いて最寄りのブックオフへ。今日は休日なのだから、仕事だけで終わるのはちょっと寂しい。だからといってブックオフに来てしまうというのもどうかと思うが。
 105円棚から。

 『ノーサイド』はあれば反射的に買ってしまう。

 その他、学生時代にお世話になった笠原先生の著書を見つけたので教え子としては見逃せない。200円。

  • 笠原伸夫「美と悪の伝統」(桜楓社)


 帰宅後、坪内祐三「四百字十一枚」(みすず書房)読了。国文学研究者の前田愛さんを扱った章では、自分の大学時代がありありと思い浮かぶ。言及されている前田愛磯田光一谷沢永一の各氏が参加した座談会「批評と研究の接点・その後」は初出誌で何度も読んだ。前田氏の主著である「都市空間の中の文学」(筑摩書房)は大学時代に購入して熟読したし、その後同じ筑摩から出た「前田愛著作集」も全巻買い揃えた。
 あの当時、前田愛「都市空間の中の文学」、山口昌男「文化と両義性」、磯田光一鹿鳴館の系譜」・「戦後史の空間」が書店を賑わし、そこへ生きのいい若手として小森陽一石原千秋コンビ(当時はそんな風に見えていた)が斬新な夏目漱石「こころ」論をひっさげて登場してきたのだ。あの時代に国文科の学生でいられたのはいま思うとしあわせなことだったな。


 続く岡崎武志さんの「気まぐれ古書店紀行」(工作舎)をとりあげた章は、この本の刊行記念で行われた坪内&岡崎対談を生で聞いているだけに懐かしい。
 ほとんど面識のなかったご両人が1996年のある日、八幡山大宅文庫で偶然の出会いを果たす。この出会いが現在の古本及び古本屋及び古本本が刮目される状況をつくる一つのキッカケとなったのだなとしみじみ思う。