失いし者の密かな愉しみ。


 朝、冷房の入ったバスに乗り込むと窓が少し開いていた。走り出したバスに外から吹き込む風が上から来るクーラーの冷気と判断に迷う涼しさを肌に伝えてくる。9月は秋なのだと思う。


 職場へUFJの新しいキャッシュカードが届く。これで午後3時までに銀行に行かなくても現金が引き出せるようになった。


 仕事を終えて本屋へ。

  • 『東京人』10月号

 特集は“生誕一五〇年 後藤新平”。彼が残したものとして表紙に挙げられているのは、同潤会アパート日比谷公会堂清洲橋永代橋昭和通り靖国通り/九段小学校/泰明小学校/隅田公園/元町公園など。
 ページをたどるといろいと後藤新平の写真が載っている。若い頃の写真をみるとなかなかの美男子。年配になってからも 中村嘉葎雄を思わせる味わい深い顔つき(特にうつむいている時が似ている)になっている。
 レジ横で『図書』9月号を貰って帰る。


 無印良品に寄ってパス入れを求める。サイフに入れていたスイカバスカードをこちらに移す。以前に使っていたのも無印の色違い。盗難でなくしたものをひとつひとつ新しいカタチで取り戻していくのも悪くない。満たされた者には欠けた隙間を埋めていくこの喜びは味わえないということか。失いし者の密かな愉しみ。

 駅近くの中華料理屋(前回行った時に餃子の無料券を貰っていたことを思い出した)で麻婆茄子飯と餃子。料理を待ち待ち『図書』をパラパラ。10月の刊行予定で岩波文庫ヘンリー・ジェイムズ「大使たち(上)」と千葉俊二編「岡本綺堂随筆集」がリストアップされているのをチェック。「大使たち」は「黙読の山」で荒川洋治さんが言及すること数度に及んだジェイムズの長編。講談社文芸文庫に入らないかなとこの日記で以前に書いたのだが、岩波文庫で出るとはね。楽しみ。


 帰宅して昨日手に入れた「木山捷平全詩集」や竹内浩三「戦死やあわれ」などを摘み読みして過ごす。