指先から米粒。


 仕事をうまく切り上げて白楽にあるUFJの支店に向かう。なんとか3時前に滑り込みセーフ。こちらにある口座の印鑑変更手続きをする。先日のみずほと違い通帳と新しい印鑑で現金をおろすことができた。ただ、こちらの口座にはあまり預金がないのでこれ以上の金額を引き出すわけにもいかない。メインバンクをみずほからUFJに変えようかと真剣に思う。


 銀行を出て、大通り沿いの天丼屋に入る。ここは昔住んでいたときから気になっていた店。ディスプレイは520円の天丼だけといういたってシンプルな感じ。初めて入るつもりで暖簾をくぐったのだが、カウンターに腰掛けてみると過去に入ったことがある気がしてくる。ただし、天丼の味はまったく覚えていないが。細身のエビと白身魚イカと海苔とししとうがのり、甘めのタレがたっぷりかかっている。味も悪くなかった。


 天丼屋の並びにある高石書店を覗く。谷内六郎装幀(ちょっと佐野繁次郎風)の梅崎春生の長編小説が目に留まる。題名は聞いたことがないもの。迷ったが買わずに出る。
 六角橋商店街の鐵塔書院に寄る。絶版文庫、幻想文学現代思想、東京、演芸、映画・美術等々しっかりと整理され、バランスよく配置されているいい古本屋だなあといつも思う。駅毎に1軒は欲しい店だ。
 文庫の棚から2冊。

 前者は、“ちくま日本文学全集”シリーズの中でもなかなか見かけない1冊。前から探していたのだ。
 後者の角川文庫の久保田二郎はあまり見ないし、200円だったので購入。


 帰宅してDVDで鬼平犯科帳「盗法秘伝」を観る。吉右衛門鬼平シリーズの中で個人的ベスト5に入る作品のため、もう5回くらい観直していると思う。鬼平をそれと知らずに自分の後継者にしようとするひとり働きの盗賊をフランキー堺が好演している。盗みに入る前の吉右衛門とフランキーが平べったい楕円形のおにぎりを食べるシーンがあるのだが、何度観てもこのおにぎりがとても美味しそうなのだ。余ったご飯に紫蘇ッ葉を刻み込んだというフランキーの説明を聴きながら、確かに吉右衛門が手に持つ食べかけのむすびには紫蘇の葉らしきものが顔をのぞかせていた。ああ、おにぎり食べたい。
 それにしても、指先についた米粒を気にしながら絵図面を扱ったり、指と指がくっつく芝居をしたりするフランキーはステキだ。


 夕食を挟んでから読書。今日も携帯本にしていた村上護「文壇資料 阿佐ヶ谷界隈」読了。阿佐ヶ谷会に所属していた木山捷平の「酔いざめ日記」が数カ所で引用されていた。早く講談社文芸文庫に入らないものだろうか。


 今日買って来た「ちくま日本文学全集 木山捷平」から冒頭の“詩”のページを読む。「木山捷平全詩集」(講談社文芸文庫)がほしいなと思うが、いまだにめぐり会えない。


 その後、「yomunelの日記」と「古書現世店番日記」で触れられていた『東京人』9月号の長嶋有さんの書評を読む。ブログの文章というのがあからさまにヒール(悪役)として登場してきている。もちろんそれは山崎ナオコーラさんやしまおまほさんの文章を称揚するために選ばれ、与えられた役割なのだと思うのだが、長嶋さんが引用する山崎さんやしまおさんの文章がそれほど特別なものとも思えないんだけどな。僕は、yomunelさんや向井さんの文章があれば、山崎さんやしまおさんの本がなくても大丈夫。