ダブリのダブリン本。


 今日が今月最後の日曜休日。来週から3週連続日曜出勤となる。折角の晴天だし、昼前に出かける。


 向かうは最近行っていない中央線沿線の古本屋だ。行きの車内では中村伸郎「おれのことなら放つといて」を読了。僕の立っている前の席に座っている女の子が気持ち良さそうに眠っているのだが、時折あたまを横の手すりに“ゴン”とぶつけるのでビックリする。しかし、けっこう激しくぶつけているのに起きる気配がない。彼女の横にある手すりは丁度彼女のこめかみあたりを直撃する位置にある。まるでジョーと対戦した力石のテンプルを襲ったトップロープと同じ場所だ。電車が渋谷駅に着く。彼女のテンプルがまた“ゴン”と音を立てる。


 まずは高円寺へ。西部古書会館の古書展をのぞく。

 単行本を持っているのだが、諸般の事情により文庫で読んで単行本は処分するつもり。


 昼食をとるために高円寺駅前の市場内にあるベトナム料理店“チョップスティク”へ行く。場所が隣りに移っていて店が少し広くなっていた。お客さんも結構入っていて繁盛している様子だ。いつもここではフォーを頼むのだが、今日は空腹だったので、海南チキンライスと冷たいベトナムコーヒーを注文。生姜風味のチキンライスに二種類のタレをからめながら美味しくいただく。甘いベトナムコーヒーもいい。
 隣りにいた赤ん坊を連れた若い夫婦が、「一番長く続いた中国の国はなんだっけ」とか、「平城京の前の都の名前はなんだった」というような会話を交わしている。日曜の昼に赤ん坊をあやしながらベトナム料理をつまみつつ、こんな会話を交わしてる2人に好感を持つ。


 荻窪へ。
 ささま店頭から。

 長谷川本はちくま少年図書館シリーズの1冊。これが石田五郎「天文台日記」が入っていたシリーズなんだ。
 「鶏園」は佐野繁次郎装幀の裸本。昭和17年もの。
 丸谷本はジェイムズ・ジョイス論集。和田誠装幀の黒いカバーに黒い線で描き出されたジョイスのイラストがとてもカッコイイ。ダブリ本だけどつい買ってしまうダブリン本。


 線路を超えてブックオフへ。話題の200円棚を覗きに行く。とりあえず、今日は見ただけで何も買わず。


 西荻窪へ。
 興居島屋から音羽館を回り、信愛書店へ。帰りの車中で読むものとしてこの2冊を選ぶ。

 「怨歌劇場」は野坂昭如短篇を滝田ゆう氏が漫画化したもの。「火垂るの墓」や「エロ事師たち」といった名を知られた作品が収録されている。
 「ミックスリサ」は「おいピータン!!」系の恋愛系短篇が収められている。

怨歌劇場 (宙コミック文庫 漢文庫シリーズ)

怨歌劇場 (宙コミック文庫 漢文庫シリーズ)

ミックスリサ 伊藤理佐傑作集 (講談社漫画文庫)

ミックスリサ 伊藤理佐傑作集 (講談社漫画文庫)


 買った2冊を読みながら帰宅。


 帰宅後、堀江敏幸「めぐらし屋」読了。薄めの本なのに、ぶつ切りで読んだせいか、最後までペースをつかめないうちに終わってしまった感じ。


 中村伸郎本を読んだので、氏が喜んで出演したという小津映画でその姿を観ようと小津監督の遺作「秋刀魚の味」を鑑賞。
 いきなり冒頭のシーンから中村氏が登場する。自分の選択の正しさを喜ぶ。主人公・平山(笠智衆)の友人役の中村氏の出番は多く、もしかしたら小津作品の中で一番出演シーンの多い作品なのではないだろうか。彼らはトリスやジョニ赤をストレートでグイグイ飲み、とっくりを高い位置に持ち上げおちょこにドボドボと日本酒を注いでこれもまた飲む。それを何度も繰り返しているうちに平山の娘(岩下志麻)が結婚して映画が終わる。
 「秋刀魚の味」を観るのはこれで3度目なのだが、見る度に面白さが増していく気がする。


 今日のBGMはこれ。