鴎外の意志力、湖南の講演力、キティのご当地力。


 出張3日目。


 朝から陽射しがまぶしい。また今日も暑くなりそうだ。


 宿出発が9時と遅いので、朝食前と朝食後に高島俊男「座右の名文」を読む。望まれる自分を生涯演じ続けた森鴎外の姿を描き出す。鴎外のような強い意志力が欲しいものだ。ただ彼のような一生を送りたいかと問われれば答えは否だけどね。


 午前中の奈良での仕事を終えて、京都へ戻る。途中高速道路で“枚方”という出口案内の看板を見る。ここが枚方か。


 京都でもうひと仕事をしてから、3時前の新幹線に乗り込む。車内で買っておいた近江牛弁当で昼食。食後、同行3人とも連日の疲れが出てぐっすりと寝込む。1時間ほどして目覚めると、まだ2人は寝ているので、「座右の名文」の続きを読む。内藤湖南夏目漱石幸田露伴と読み継ぐ。この3人は京都帝国大学の文科大学初代学長であった狩野亨吉が教授にしようと招聘したメンバーだ。漱石は辞退し、露伴は博士号だけもらってさっさと辞め、湖南だけが教授として定年まで勤め上げることになる。高島さんに言わせると今でも読むに値する講演を行ったのは漱石と湖南の2人だそうだ。漱石の講演は幾つか読んだことがある。湖南の講演も読んでみようかと思う。


 5時前に新横浜着。途中、ちらっと本屋を覗いてから帰宅。この3日間の熱気が籠った部屋の窓を開け放ち、空気を入れ替えてから、洗濯物をクリーニング屋に出しに行き、その帰り道のコンビニで夕食を買う。


 後は、部屋で出張報告書を書いたり、明日からの仕事の資料をチェックしたりして過ごす。否応なく明日から職場での仕事が始まってしまうため、もう一度自分の生活のスタンスを確認する。


 隣りに住んでいる同僚が、留守中の郵便物などを届けてくれる。代わりに頼まれていた京都限定キティちゃんのボールペンを渡す。沖田総司姿のハローキティだ。
 そう言えば奈良で見たご当地ものは蓮の花の上にキティがのっているように見えた。店員さんに確認するとのっているのは蓮の花ではなく、桜の花だとのこと。そうなのか、てっきりキティちゃんは成仏してしまったのかと思ったよ。