夕方仕事を終えて本屋へ。
平台を眺めていると突然大判のこの本が目に入る。その大きさとざっくりとした造作、そして中を開けると赤井稚佳氏の色鮮やかなイラストが目を奪う。迷うことなくレジへ。
- 沢木耕太郎「246」(スイッチ・パブリッシング)
『Switch』誌上に1986年から87年にかけて連載されたこの日記風エッセイの存在を知ったのは、たしか坪内祐三さんの文章でだったと思う。そのとき坪内さんは単行本化されていないこの日記の危うい魅力を語っていたような気がする。このあいだ、月刊化した『Switch』最新号の広告ページにこの本の出版が予告されていたので楽しみにしていたのだ。こんな風に本となったのか。
帰宅して、「246」を眺める。
まず最初の1986年1月10日の記述に目を通す。《三軒茶屋》、《『深夜特急』》、《永田洋子》という単語が目に入る。
次にあとがき「消えたもの、消えなかったもの−−少し長いあとがき」を読んだ。偶然発見したメモをもとに、書かれなかった連載終了後三カ月分の日記を復元しつつ、この本にまとまる連載がどのようにして始まって終わり、そしてそこに書かれていた諸々が現在どのような作品として結実したり、またしなかったりしたのかを語っている。
その後、気まぐれにページをめくっていって、沢木さんが荒川洋治「ボクのマンスリー・ショック」を読んでショックを受ける記述にぶつかる。沢木耕太郎と荒川洋治という組み合わせが、なんだか新鮮であった。
古典入門は「検定絶対不合格教科書 古文」から「徒然草」の章を読み、その後「古典の読み方」を少し。古典は変体仮名の写本を読まなくてはならないというものではなく、活字本で読んでも構わないのだと藤井貞和さんに言われるとなんだか救われたような気がする。
続いてハードボイルド入門(毎日新聞の丸谷才一さんの書評によれば社交界小説入門となるようだが)。「ロング・グッドバイ」を読み継ぐ。今日のマーロウは、拳銃をぶっ放したり、美女にくちづけをしたりとハードボイルドの名に恥じない立ち居振る舞いをしていた。
読書の時間が終わり、けもの道の奥へと進んでいく。
今日も10冊以上の収穫あり。明日もけもの道に分け入っていく予定なのだが、本の山と山の間隔は立て込んでおり、なかなか先に進まない。まるで東京付近でよく渋滞している国道246のように。