ピーナッツとしての村上春樹。

 ホテル近くのモスバーガーで朝食セットを食べてからチェクアウト。


 JRの普通列車で京都まで。どのみち古本屋が店を開けるのは午後からなのだからと1時間半かけてのんびりと行く。車中で阪田寛夫「うるわしきあさも」(講談社文芸文庫)読了。童謡「サッちゃん」の作詞者である阪田氏がいかに音楽と密接に関わってきたかがよくわかる短篇集だな。作曲家であった叔父さんが幾つかの短篇に登場し、強烈な印象を残す。


 京都駅のコインロッカーに大きなカバンを入れてから、地下鉄で京都市役所前へ。新刊書店なら早く開いているだろうと三月書房の前に行ったら、12:00開店だった。
それなら昼食を済ませてから来ようと寺町通の“スマート”に行き、オムライスを食す。
 三月書房へ戻る。

 レジの上に手に入れそこねていた『海鳴り』第18号が置いてあるので思わず凝視してしまう。その視線に気づいたのか「よろしかったらどうぞ」と店主の方から声をかけていただく。ありがたや、うれしやと頂戴する。


 昨日聞いた古本喫茶十三月を探しに地下鉄で鞍馬口まで行く。車中では『海鳴り』から山田稔「富来」を読む。「富来」は加能作次郎の郷里の名。作次郎の作品に魅せられた山田さんが富来を訪れる様子が描かれている。


 鞍馬口で下りてキョロキョロしながら歩を進めるも、それらしき店を見つけられず。結局先に行き過ぎてしまい、2つ先の駅から地下鉄に乗り、いろいろ乗り継いで一乗寺へ向かう。車中で『海鳴り』から天野忠「このごろ」、『CABIN』から山田稔「前田純敬、声のお便り」、内堀弘「古本屋大塚書店」、扉野良夫「能登へ」を読む。扉野さんの文章は、先程の山田さんと同じく加能作次郎の故郷を訪ねる旅。作次郎が丁稚をしていた叔父の家があった京都清水産寧坂で仕事を終え、作次郎の故郷富来に向かう扉野さんの姿はすでに文学的な何かである。


 恵文社一乗寺店は、若い女性客を中心に大にぎわいであった。どうみても表の通りを歩いている人の数より店内の客数の方が多い。それにしてもこの店は来るたびに広くなっていくような気がする。


 ガケ書房へ移動。店内の古本善行堂の棚から2冊。


 岡崎武志さんと山本善行さんのトークショーが始まる。山本さんが「読書の腕前」の内容について岡崎さんに質問をする形式ですすむ。いつものようにお二人のなにげない会話が自然と掛合漫才風になっていて笑いが起こる。コンビ名は会場の拍手の多さで“均一亭タケ&ヨシ”に決定した。
 トークの後は、タケ&ヨシが持って来た古本のオークション。僕は山本さんが出品した村上春樹川本三郎「映画をめぐる冒険」(講談社)を1000円で落札。文庫化されておらず、古書価5000円はするとのこと。いい買物をした。ビデオで観られる映画264本を2人が選び、それぞれ自分が選んだ映画に10行程度のコメントを載せている。村上春樹氏がどのような映画を選び、どのようなコメントを寄せているのかが興味深い。


 会終了後、いらっしゃっていたにとべさんとお話をする。にとべさんとは2年前の春にスムース友の会でお会いして以来。一箱古本市の話などをする。


 打ち上げに行かれるみなさんと別れて、京都駅へ。
 土産に西利の漬け物を買い、その店の喫茶スペースで京漬け物のお茶漬け定食を食べる。まずは、お茶を掛けずに普通に漬け物で御飯を一膳食べ、二膳目はほうじ茶を掛けてお漬け物でお茶漬けを食べる。う〜ん、満足。


 20:15発のぞみ156号で京都を発ち、22:17新横浜着。車中は先程競り落とした「映画をめぐる冒険」から村上春樹パートだけを拾い読みする。川本さんごめんなさい。まるで柿の種からピーナッツばかりをよって食べる子供の様だな。それにしても、なんでこれを文庫にしないのだろう。500円DVDで名作が観られる今の時代の手頃なガイドブックとしても面白いのにと思いながら奥付を見ると“プロデューサー 安原顯”の文字が。これかなもしかして。


 11時過ぎ、帰宅。明日から仕事だ。