雨の如くに。


 朝、風呂で春風亭柳朝「一眼国」を聴く。

 
 午後から持ち帰りの仕事をパソコンに向かって数時間集中してやっつける。

 夕方食事を買いにコンビニへ。花粉症を考え、今日の外出はこれだけ。


 夕食をとりながらビデオで川島雄三監督「幕末太陽伝」を観る。何度観てもいい映画だ。フランキー堺の動きに全編を通して目を奪われる。今回印象に残ったのは若旦那徳三郎役の梅野泰靖と女中おひさ役の芦川いづみの二人。梅野さんは三谷幸喜作品で知った俳優だが、それまであまり見た記憶がなかった。そうか、ここにいたのか。芦川さんは同じ川島作品「洲崎パラダイス」でも一途なそば屋の店員役を好演していた。真面目でしっかり者の娘役がとてもよく似合うな。


 友人に送るための明治大正作家の文庫本を探していて、先日ブックオフで買った泉鏡花「幻談・観画談」(岩波文庫)を見つける。山村修(狐)・中野翠両氏がすすめる「観画談」を読む。体を壊した苦学生の大器晩成先生が、体にいい名水があるという山寺を訪れる。すると大雨が降って来て、寝ていた晩成氏は安全地帯にある隠居所へと案内される。そこには耳の聴こえない不思議な老僧がひとりいて、なぜか初対面の彼の名を知っている。外はザッと雨が降り続けている。通された部屋には絵がかかっている。それに見入る晩成氏。そして《屋外は雨の音、ザアッ》。ただ、これだけの話である。別に怪談であるわけではないが、なんとなく落語の「除夜の雪」を思い出した。


 「観画談」とはことなり、春らしい陽気の今日は雨など降っていない。しかし、屋外には音もなく花粉が舞っている。まるで雨に降り込められたように花粉に降り込められた一日。