三軒茶屋の悲劇から下高井戸の歓喜へ。


 本来半ドンの土曜日に午後から全員参加の仕事が入ったため、職場にある食堂の食券がひとり1枚ずつ配られる。4種類のメニューから好きなもを選べるようになっているのだが、それがすべてカレーライスと何かのセットなのだ。カレーを扱う食品会社の社員でもないのに何故こんなにカレーに特化した職場なのだろうと思う。この食堂のカレーを食べるのは何年ぶりだろうか。実はここの食事はうまくないので普段は敬遠して仕出しの弁当を頼んでいるのだ。久し振りに食べたカレーはやはりおいしくなく、夕食時まで嫌な胸やけが残った。


 退勤後、本屋へ。

“それでも本屋が好き!”という本屋特集があるので買ってしまう。


 帰宅後、『論座』をパラパラ。永江朗・青田恵一の両氏による対談「全国150店 珠玉の『町の本屋さん』!」がさまざまな地方の書店を挙げていて壮観。青田氏が書肆アクセスを取り上げて《地方出版社、小出版社の本だけを扱って、それでも何とかやっていけているというのは、いかに神保町でも、「日本の奇跡」、あるいは「世界の奇跡」と言ってもいいのではないでしょうか。》ともの凄いことを言っている。


 先日借りてきた岡本喜八監督「江分利満氏の優雅な生活」のDVDを観る。会社の屋上でコーラスやバドミントン、そしてバレーボールなどに興じる若い男女の姿がテンポよく活写されるなか、ひとり群れから離れてぽつねんと佇む男がいる。それが江分利満(小林桂樹)だ。サントリーの宣伝部に勤める彼は酔った勢いで『婦人画報』(佐野繁次郎装幀の雑誌が映る)の編集者に小説を書く約束をしてしまう。断りきれない彼は、自分の親や妻子との生活を小説にし、その作品が直木賞を受賞することになる。その作品執筆とシンクロして彼と家族の過去がいろいろと回想される。見せ方にいろいろと工夫を凝らしていてあきない。直木賞受賞を祝う職場の若手による会で江分利がなぜ運動会が好きなのかをとうとうと語るシーンがあり、これがいい。当たり前かもしれないが山口瞳のエッセイを読んだような気になる。話が止まらなくなった彼が帰りたがる同僚を引き止めつつ語る戦争中のもろもろがこの作品の山場だろう。新珠三千代演じる奥さん役もよろし。

江分利満氏の優雅な生活 [DVD]

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 テレビをつけると「アド街」で世田谷線を特集している。今日職場で大学受験の時の話になり、某大学の不合格を見届けたあと三軒茶屋から世田谷線に乗り、別の大学の合格発表に向かいつつ、もしこれでダメだったら浪人かと頭の中がグルグルした状態で下高井戸まで行ったことを思い出したばかり。タイムリーだ。あの三軒茶屋から下高井戸の長かったことが忘れられない。


 複数のブログで池田晶子さんの死を知る。突然の訃報に驚く。一時期、この人の本をまとめて読んでいた時期があった。哲学を自分の言葉で語ろうとする姿勢と、人を批評するときの気っぷのいいこき下ろし振りが好きだったのだ。