長いあとがき。

 
 昨日、アレルギー用の軟膏を塗らずに外出してしまったせいか、今日はいつも以上に花粉に反応している感じがする。


 咳もここ最近で一番という状態。う〜ん、困った。


 退勤して本屋へ。

  • 『ミステリマガジン』4月号
  • 『GQ』4月号

 前者は村上春樹訳「ロング・グッドバイ」が先行掲載。村上氏のエッセイ「準古典小説としての『ロング・グッドバイ』」も載っている。
 後者は特集が“ビジネスに効く、新書128冊。”なので買っておく。東川端さん(id:thigasikawabata)がチェックしていた「あのamazonの本当の実力を探る。」という記事も興味をひく。

GQ JAPAN 2007年 04月号 [雑誌]

GQ JAPAN 2007年 04月号 [雑誌]


 帰宅後、先日テレビで見た花粉症対策を実行しようとすぐに風呂に入り、髪の毛と体を洗って花粉を落とす。湯舟につかりながら昨日買ってきた春風亭柳朝「寝床」を聴く。京須偕充さんの本で志ん生バージョンの「寝床」と紹介されていたのでそこをポイントに聴いていく。あのがんもどきの製造法の下りで、ここまで細かく説明した人は初めて。文楽志ん生志ん朝の誰よりも微に入り細を穿った語り口である。もちろん、旦那が番頭を蔵に追い込んで蔵の窓から義太夫を語り込むシーンもしっかり入っている。志ん生バージョンでは番頭は翌朝逃げ出して今ではドイツにいるということになるのだが、柳朝バージョンは別の外国になっている。どこかは聴いてのお楽しみ。


 『ミステリマガジン』を手に取って眺める。「ロング・グッドバイ」は最初の3章までを掲載。エッセイの方は単行本のあとがきとして書かれた90枚に及ぶエッセイのほんのさわりを3ページほど載せている。3月8日に出る単行本をどうせ買うのだから、あわててこの雑誌に手を出すこともないのだが、たとえ10日でもはやく読めると思うと思わず知らず手が出るのである。まあ、まんまと出版社の思惑にのせられているのだけれど。くやしいので、3章の終わりの部分を少しだけ引用してみる。これはチャンドラーでありながら、すでにやはり村上春樹でもある文章だと思う。


 《もしそのとき尋ねていれば、彼はこれまでの人生について洗いざらい語ってくれたことだろう。しかし私は質問ひとつしなかった。顔に深い傷を負った経緯すら尋ねなかった。もし私が質問し、彼が答えていれば、あるいは二人ばかりの人間の命が救えたかもしれない。しかしそれはあくまで「あるいは」であり、どこまでいっても「あるいは」でしかない。》



 村上氏のエッセイの方は、「ロング・グッドバイ」を訳すことになった経緯を語りながら、評価の高い清水俊二訳に敬意を表しながらも、細部を訳さない《古き良き時代ののんびりとした翻訳》と位置づけ、村上訳を「完訳版」として対置させている。このあとがきエッセイの完全版を単行本で読むのも楽しみだ。