ストップ・ザ・チョコレート。


 職場へ行く。今日はバレンタインデーである。これまで職場の女性たちから男性たちへ連名の義理チョコが配られていたのだが、先日女性の同僚から「義理チョコを配るのをやめます」という虚礼廃止宣言が出て、見事に机の上には何ものっていない状態で午前中を過ごし、午後より出張する。


 出張先のホールで偉い人の挨拶を聴く。その話の中に「読み、書き、ソロバン」という言葉が何度か出てくる。その度、頭の中で「読み、書き、越中」というフレーズがリフレーンされて笑いそうになって困った。


 午後4時過ぎに仕事が終わり、そそくさと神保町へ。この時間からだと自然に急ぎ足になってしまう。まずは書肆アクセスへ。

 畠中さんと少しお話しする。「ブログ再開したんですね」と声をかけてもらう。気にしてもらえているということはやはりうれしいものですね。


 足早にいつものコースをチェックした後、古本カフェダイバーへ。こちらでは現在“古本 寄港市”が行われている。店の常連さん達による店内古本一箱市と言えばいいのかな。いろいろな箱を覗くが、やはり退屈男さんの箱である“退屈文庫”が僕にとってはど真ん中の品揃えであった。いい本がうれしい値段で出ているため、あれもこれもと買い占めたくなるが、諸々を考えて2冊で止めておく。

前者が400円で、後者が600円。

 それ以外に店の棚から結城昌治志ん生一代(上・下)」(朝日文庫)を買う。これは今日の携帯本である小林信彦「名人 志ん生、そして志ん朝」(文春文庫)の影響で読みたくなったため。


 日本特価書籍で。


 帰りの車中は「名人 志ん生、そして志ん朝」を読みながら。大須演芸場における志ん朝独演会の話は何度読んでも嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。だからこそ、談春七夜に僕たちは足を運ばなければならないのだろう。行けてないけど。


 急いで行きつけの床屋に辿りつくとまだ閉店前であった。最後の客として散髪してもらう。涼しくなった頭を抱えながら隣りの中華料理屋でジャンボ餃子と中華丼の夕食。


 帰宅後、「特別な一日」から「わがオーウェル」を読む。フランス留学時代に英語で読んだオーウェルカタロニア讃歌」を筑摩叢書の日本語訳で読み返し、自分の中から政治的なるものが影をひそめていることを実感する山田さん。逆に言えばそれは若かりし日にあった政治への熱い思いの存在を証しているのだろう。


 内澤旬子「世界屠畜紀行」の続き。今日は第2章のバリ島編と第3章エジプト編。特にバリ島編での内澤さんの多彩なオノマトペの使い方を楽しむ。《再び自転車に乗った男がたりらーんと闇から登場。》の《たりらーん》なんてバリの時間にルーズな男の姿を彷彿とさせる傑作だ。このほかにもちょっと真似できないオノマトペ使いが盛りだくさんに出てきます。井上ひさし氏に是非読んでもらいたいな。