「月島物語」ふたたび。


風呂で古今亭志ん生「らくだ」を聴いてから出かける。

電車に乗って神保町へ。
車中で『新潮』掲載の四方田犬彦「先生とわたし」を読む。
面白い。

古書会館の「新宿展」に行く。
カレル・チャペック「イギリスだより」(ちくま文庫
近藤好和「装束の日本史」(平凡社新書
高橋昌男「独楽の回転」(小沢書店)
上記3冊を購入。純粋に古書と言えるのは最後の1冊だけかな。
レジ付近にいた古書現世の向井さんと少しおしゃべり。

会館の出口のところで古本カップルとして名高いYさんとNさんに出会う。誘われて一緒に昼食。上海朝市というような名前の中華料理店で、チャーハン、焼きそば、小龍包に餃子などを食べ満足。

お二人と別れて、東京堂へ。bukuさんに誘っていただいた四方田犬彦講演&サイン会に参加する。先月工作舎から出た「月島物語ふたたび」出版記念のイベントである。受付で「月島物語ふたたび」を買って席に着く。司会は工作舎の石原さん。四方田さんの話は淀みなく続き、明治になって誕生した月島の歴史を概観し、本に紹介されたエピソードの幾つかを語り、観客の質問に答えて月島の祭の意味を解釈しつつ現在も伝説を生みつづける月島と言う場所を言祝いで2時間の予定時間を終えた。

会終了後、並んで本にサインしてもらう。奇麗な装幀の本に銀色のペンで僕の名前と四方田さんの名前が入った。

bukuさんから、石原さんがこれから四方田さんを囲んで打ち上げに行くので一緒に行かないかと言ってくれていると聞き、邪魔でなければとご一緒させていただく。同行者には会場にいらしていたライターの黒岩比佐子さんも加わる。


八木書店の向かいの居酒屋に行き、四方田さんの様々な話に耳を傾ける。出て来た人名は多岐に渡り、話題も次から次へと展開していく。その膨大な著作が象徴するような広範な知識(それも頭でっかちではなくて人間臭い感じ)の海に漂うように話の波に心地よく揺られていた。
僕は、四方田さんのよい読者とは言えないが、「月島物語」は単行本で読み、文庫本も買って増補された川田順造氏との対談もチェックしている。今回の本には新たに書き下ろされた「月島2006」と陣内秀信氏との対談が収録されている。その細部まで凝った造本とともに楽しみたい。
四方田さんの本で印象に残っているのは「日本の女優」(岩波書店)と「モロッコ流謫」(新潮社)だろうか。前者からは李香蘭への、後者からはボウルズへの興味を掻き立てられた。

石原さんの編集者としての端正さ、bukuさんの詩への造詣の深さ、黒岩さんの明治30年代と村井弦斎への思いの強さをも感じつつ、古瀬戸で珈琲を飲んだ後散会。

帰りの車中でも「先生とわたし」を読み継ぐ。第3章出自と残滓に入り、由良君美氏の父由良哲次と母清子の来歴が綴られる。

帰宅し、bukuさんから貰ったフリーペーパー『buku』2006秋号に目を通す。ステキな雑誌だ。ただ池袋に行かないと手に入らないのが難点だ。