古本とは古い本である。


仕事を終えて神保町へ。

アクセスで「神戸の古本力」と「天野忠随筆選」を購入。

東京古書会館に行く。入館証を貰ってエレベーターで8階へ。
ここで「古本夜の学校」が行われるのだ。

トークショーの出演者の一人である畠中さんがいらっしゃったので挨拶する。

会場で同じく出演者の石田千さんの新刊「屋上がえり」がサイン入りで売っていたので買う。

荻原魚雷さんを加えてトークショーが始まる。

それぞれの神保町体験から話がスタートする。

石田千さんは、坂崎重盛さんとの面接の場所として初めて神保町に足を踏み入れ、指定先の店が分からなくなり、目の前の本屋で聞こうと思いドアを入ると客が全員男性で一斉に石田さんの方を振り向いて見たのだそうだ。そこは芳賀書店だったということを特に力を入れるでもなく、意識するでもなく淡々と話す姿が印象的。
石田さんは写真で拝見したことはあったが、動く姿を見たのはこれが始めて。そのお顔を眺めながら、「やっぱり、福島の人だな」と思う。僕の母親が福島出身で、これまで福島の女性を見るとどこか母親に似た面影を宿している人が多いと感じることがままあり、その共通した面影を個人的に「福島顔」と名づけている。職場にも20代の福島出身の女性がいて、どことなく母親の顔に似ているといつも思うのだ。今日、石田さんの姿を眺めながら、そのポイントが目元にあることに気がつく。どうもうまくいえないのだが、母親・同僚・石田さんは目元に共通したものがあると感じた。


魚雷さんは、昔グラビア雑誌『GORO』でライターをやっていたことがあり、その関係で神保町に来ていたらしい。そこのライターになったのが、上京してすぐ新宿ゴールデン街で飲んでいて隣に座った編集者の人にやってみないかと声を掛けられたからとのこと。「なぜ、ゴールデン街で飲んでたの?」という畠中さんの問に、「東京で知っていた地名が新宿ゴールデン街だったから」と答える魚雷さん。なんだか、すごい。
小さな声で、マイクを通してさえも時折聞こえなくなる魚雷さんの声が、会場全体に間違いなく響き渡ったのは、3人の方々が持ち寄った今年の3冊を紹介するコーナーの時、炭鉱で働きながら好きな女性の詩集を出すために奔走した人物がその顛末を綴った日記本の紹介を始めた途端に魚雷さんのスイッチが入ったらしい。あの静かな魚雷さんが、その男性の不器用な恋心とその対象となった女性詩人のことをとても熱く語り始めたのだ。会場も「おおっ」と言うカンジで反応する。この夜学の仕掛け人である石神井書林の内堀さんが止めに入って水入りになった。


畠中さんは、何とかトークショーをうまく運んで盛り上げようと一生懸命に話題を振ったり、お話をされたり気を遣われているなあと感じる。しかし、話される内容や言葉がそういうご自分の気遣いを消し飛ばして余りある話の連続なのがまた楽しい。特に、「古本て古い本なんだなぁって思った」という名言が心に残った。


2時間、ユルく時々熱いトークを聞きながら楽しい時を過ごした。

会場には退屈男さん、旅猫さん、リコシェの阿部さん、塩山芳明さんの姿も見えた。

その後トークショーの3人を囲む打ち上げに退屈男さんたちとともに参加する。
1時間ほどして先に帰ろうとすると石田さんがわざわざ一声掛けに席を立って僕のところに来てくれる。思っていたように味わいの深い人だなあと思う。ますますファンになりました。

帰りの電車で「神戸の古本力」を読む。