マッチポンプ?

朝、携帯本として河盛好蔵「回想の本棚」(中公文庫)を持って出る。1日早いがこれを4月の中公文庫本とする。
退勤後、本屋へ。
昨日1冊読み終わっているので、1冊なら買うことができる。

巻末の解説で夏目房之介氏が書いているように、1巻の最後でアトムが、2巻の最後でウランが登場するというように構成がうまい。そしてこの3巻の最後ではついにプルートウがその姿をあらわす。面白い。
PLUTO (3) (ビッグコミック)

帰宅後、早速プルートウを読了。
引き続き穂村弘「にょっ記」(文藝春秋)を読み出す。日記の形態をとりながら、詩のような、メルヘンのような、エッセイのような短い章段が並んでいる。天使が出てくるシリーズや「うこん」という言葉への徹底したこだわりなど印象深いものは多いが、思わず附箋を貼ったのは12月22日の「マグナム」と題された一編。《御徒町の回転寿司「マグナム」に行く。》という出だしの一行から隣りの客が「とんでイスタンブール」を歌う最後まで、どうしようもなくおかしい。
薄い本なので、あっという間に読み終わる。装幀もスリップ型の箱もセンスがいい。『本の話』4月号所収の穂村弘(著者)×フジモトマサル(イラスト)×名久井直子(装幀)×長島有(ゲスト)による「『にょっ記』座談会」を読むと、この本の装幀やイラストについての楽しみが広がる。
にょっ記

読みかけであった高島俊男「メルヘン誕生」(いそっぷ社)を読み継ぎ、読み上げる。高島氏は一貫して向田邦子作品の限界と欠点を冷静な筆致で指摘し続ける。それによって逆に氏の向田作品とその著者に対する強い愛着が感じられる本だ。欠点を指摘する文章の中に、ふいに挟み込まれる「天才」という語の輝きがまぶしい。向田さんは、山本夏彦山口瞳といったうるさ型の目利き同様高島さんも虜にしてしまったようだ。
ぜひ、文庫化して向田作品に興味を持つ人々が気軽に手に取れるようにしてほしいと思う。
メルヘン誕生―向田邦子をさがして

今日は1冊買って、3冊読んだから、差し引き2冊買える権利を確保する。なんだか、本を無闇に増やさない為に始めた取り決めが、購買振興策化しているように思えるのは気のせいか。適切な使い方ではないかも知れないが、“マッチポンプ”という言葉が頭に浮かぶ。