貰ったものと買ったもの。

今日は職場で関係者の蔵書整理があり、欲しい本を持っていっていいということなので、数冊いただく。

筑摩叢書の黄土色と赤茶色のボーダーのカバーが原弘装幀であることを初めて知った。
「先生根性」は百鬼園先生のドイツ語教師時代を語った文章のアンソロジー。装幀は田村義也氏。
松本清張作品は長編を幾つか読んだだけで、短篇は読んだことがない。面白そう。


カバンは既に重いのだが、本屋へ。

『新潮』のチェーホフの未翻訳短篇にも惹かれたのだが、本当に短い作品ばかりだったので、結局いつものに落ち着いた。レジで『波』3月号を貰う。
大戸屋で夕食。新メニューの“福岡八女産筍と鶏の黒酢あん炒め”(本当はもう少し長かった気がする)を注文する。待つ間に『波』から坪内祐三「私は中原昌也の複雑骨折を支持する」と福田和也×早川清「『週刊新潮』の五十年を貫くもの」を読む。早川氏は『週刊新潮』の現編集長。
相変わらず、大戸屋の御飯はひどい。特に今日のはベッチャリしてしまってなんだか食べながら悲しくなる。高い米ではなくても炊き方でもっと美味しく食べられるはずだ。がっかりして店を出る。


帰宅後、『文學界』に目を通す。
今月号から鴻巣友季子「カーヴの隅の本棚」の連載が始まる。今回は「家政婦の血抜き」と題して、「嵐が丘」の中に登場する4人の家政婦についての話。
小谷野敦「上機嫌な私」は、「八犬伝」について語りつつ、“比較文学研究”というものに言及している。
狐「文庫本を求めて」は吉田健一「酒肴酒」(光文社文庫)と色川武大「あちゃらかぱいッ」(河出文庫)を取り上げている。吉田健一氏の飲食エッセーが小説と同等の価値があると評価。引用を読むだけで吉田健一文章ワールドに酔う。「あちゃらかぱいッ」については、先日僕も日記で書いた井上ひさし解説に触れ、お互いの浅草(芸人)観の違いから言葉を交わすこともなかった二人の反目に関して色川氏の側に共感を寄せている。

ブログ散歩。「黌門客」(id:higonosuke)で、4月の新刊文庫を知る。なかでもこの2つに眼がいく。

河出文庫の相変わらずの頑張りぶりに微笑みながら、講談社文芸文庫木山捷平ラインの復活に喜びを禁じえない。そう遠くない未来に「酔いざめ日記」の文芸文庫入りを期待してしまう。


今日のピアノトリオ。

バト・パウエル・イン・パリ

バト・パウエル・イン・パリ

ヒア・カムズ

ヒア・カムズ

前者は、パリに行った後のパウエルの姿が記録されている。酒とクスリでヘロヘロなのに、時折たまらないメロディをつむぎだす。例えば8曲目の「言い出しかねて」。前の「パリの舗道」が、いつ指が悲鳴をあげるかハラハラどきどきさせるだけに、この何かを思い出しているかのようなゆっくりとした足取りの小品に心和む。
後者は、“ジャズピアノの父”と呼ばれるらしいハインズの還暦演奏。こちらは、まかり間違っても精神を病んだりしそうもない。ジャケットの写真も当時バリバリのリチャード・ディヴィスとエルヴィン・ジョーンズが霞んで見えるくらいのデカイ身体と満面の笑み。寺島氏推薦の3曲目「スモーク・リングズ」は確かにこちらも愛すべき小品だ。