ノラが見る野趣のある棚。

3月は雨で始まった。
今日は仕事が早く終わる。
本屋へ。

  • 『編集会議』4月号

先日、ジュンク堂でのトークセッションの後の飲み会でご一緒したライターの北條さんから、4月号の「本棚を、見に行こう。」のコーナーで古書現世を取り上げると聞いていたので購入する。
古書現世の飼い猫のノラがご主人の向井さんと古書現世を紹介するという形をとっているのが楽しい(ノラの写真ももちろんある)。古書現世の棚を評する次のフレーズに、フンフンと肯く。

《行き届いてはいるけれどセレクトショップっぽく揃えすぎてない感じというか、風通しのいい野趣にあふれる棚だと自負しておる。》

ノラの口を通じて語られるこの内容は、向井さんのコメントか、北條さんの見立てなのか、どちらにしても言い得て妙。
「WHOSE DESK?」のコーナーは宮沢章夫氏(こちらにも飼い猫の写真あり)。この人の存在はほとんどノーチェックなので、新鮮。恥ずかしながら戯曲家であることさえ知らなかったくらい。「資本論も読む」や「チェーホフの戦争」に興味を持つ。そうか、チェーホフの戯曲は神西清訳(新潮文庫)がいいんだ。
実は、かの有名な戯曲をまだ一度も読んだことがないのだ。ブックオフあたりで手に入れてこっそり読むことにしよう。
いつものようにこの2箇所しか読むところがないと嘆いていると、「雑誌の歴史学」というコーナーで『ノーサイド』を取り上げているではないか。岩波編集部の桑原涼という方が書かれているが、『ノーサイド』の休刊理由を推測した次の記述に我が意を得たりと思う。

《『ノーサイド』の読者は自分自身の思い出を雑誌にシンクロさせることで、すべてが誌上で満たされ、書斎の外に出る必要がない。だから、商品の紹介記事が豊富で購買意欲を刺激される『サライ』に比べ、雑誌として展開の可能性に欠けるという評価があったのであろう。》

これは僕が以前から抱いていた〈『ノーサイド』=事典/『サライ』=カタログ〉説(そんな大層なものではないが)に通じる意見だ。
先日、おまささんが、『ノーサイド』の創刊号を見たが魅力を感じなかったとおっしゃっていたが、確かにここに載っている創刊号の表紙とそこに書かれた記事紹介の文を見るとあまりそそる感じじゃない。写真をベースにした表紙にしてから俄然魅力的になる。“ノスタルジーハンドブック”、“むかし戦争に行った”、“キネマの美女”といった未所持の特集号に心奪われる。バックナンバーを集めなければと思う。今、こういう雑誌を20代から30代(の特に女性)をターゲットに出すということを考える出版社や編集者はいないのだろうか。

帰宅後、少し仮眠をとってから持ち帰りの仕事。とりあえず、仕上げる。

今日のピアノトリオ。

ロレイン・ゲラー・アット・ザ・ピアノ

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  • アーティスト: ロレイン・ゲラー,リロイ・ヴィネガー,エルドリッジ・ブルーズ・フリーマン
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ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol.1

ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol.1

ともに女性ピアニスト。前者はアメリカ人で後者はドイツ人。そのためか大らかなアメリカと堅実なドイツといった印象を受けてしまう。これって先入観だけの受け取り方かもしれない。ただ、どちらにしても2人とも真摯にピアノに向っている感じがする。その一生懸命さを不興と受け取る人もいるかもしれないが、僕は嫌ではない。とくに、30歳の若さで命を落としてしまったロレイン・ゲラーの唯一のリーダー作である前者には一層好感を抱く。