咳をしてもひとり。

昨晩も12時過ぎに床についたにもかかわらず、咳が出て2時近くまで眠れず。これが「シャボン玉ホリデー」のコントであったらザ・ピーナッツおかゆを持ってきてくれるのだろうが。現実には誰も来てくれないので「いつもすまないねぇ」というセリフを言うこともできない。
職場でも、時折続く咳に同僚が心配そうに声をかけてくれる。なんだか申し訳ない。今日は午前中だけの野外の仕事。曇天で風が冷たい。午後早くに退勤し、今日から始まった新宿京王百貨店での古書市に行く。
この古書市には京都の古書店も参加しているため、赤尾照文堂や水明洞といった去年訪ねた店名に懐かしさを感じる。先日行った銀座松屋の古書の市と比べると規模も大きく本の数も格段に多い。それだけでもうれしくなる。端から端まで見て回り、以下の3冊を購入。

上から315円、1500円、1000円であった。「新潮社七十年」は箱に1500円と書いてあったのだが本体の値札は1000円だったので得した気分。昨日読んでいた「紙つぶて」に《『新潮社七十年』は河盛好蔵が正確な資料を巧みにアレンジして読ませた》とあったのを思い出し手元に置いておくことにした。
新宿から渋谷を経て東横線に乗り換える。地元の駅で降りずに2駅ほど先で下車。今夜7時からこの地にある区役所のホールで仕事がらみの会合があるのだ。会議まで1時間ほどあるので駅近くの新古書店を覗く。何故か知らないが室生犀星講談社文芸文庫が何冊も並び(講談社文芸文庫はそれだけしか置いていない)、中公文庫が最近復刊した「わが愛する詩人の伝記」もあれば、新潮文庫の「室生犀星詩集」も2冊置いてある(「杏っ子」もあった)という充実振り。この手の店でこれだけ室生犀星の文庫が充実しているのは珍しい。
近くのスターバックスに入り、カフェモカシナモンロールを注文する。レジ係の女の子がとても感じよく対応してくれるので気持ちがいい。ソファ型の椅子が空いていたのでそこでくつろぎながら「荊の城」下巻を読み継ぐ。7時10分前となり、立ち上がりコートを着ようとするとタイミングよくさっきの女の子が現れ、「こちらお下げしてよろしいでしょうか」と僕を見つめて微笑みながらカップとトレイを運んでくれる。またもや好印象。きっと10代だったらこれだけで恋に落ちていると思う。そう10代ってそういうもんだったよな、と心の内で苦笑い。10代を目を細めて遠く眺める現在ではこれくらいで恋に落ちたりはしないのだよ、ワトソン君。
7時からの会合に参加。もう15年近くこの時期にあるこの会合に出席している。ここにくるとまた新しい年が始まったのだなと実感する。主催者の説明を聞いている途中でまた咳が止まらなくなり、慌てて部屋を出てトイレに駆け込む。トイレで咳の発作がおさまるのを待って、また会場へ。結局これを3度ほど繰り返すことに。説明内容が例年同様なので別にそれでも支障なし。
地元駅に戻り、本屋へ。

『東京人』は夏目漱石特集&「寄席色物」小特集。表紙の南伸坊画伯描く漱石イラストがお茶目でいい。「Web読書手帖」経由でこの特集を知り、一昨日銀座教文館で探したのだが見つからず、今日やっと入手。黒岩比佐子さんが書いた「池辺三山 流行作家、漱石の仕掛け人。」も掲載されている。漱石朝日新聞の小説記者にした三山との関わりをコンパクトにまとめてくれている。漱石をかばって朝日を退社した三山はその5ヶ月後に48歳の若さで急逝する。その三山を悼む漱石の文章(「三山居士」)が末尾に引用されているが、黒岩さんが《簡潔な文体》と呼ぶそのぶっきらぼうとさえとれそうな文体に紛れもない“夏目漱石”を感じる。こういう文体に魅了されることによって自分の漱石体験が始まったことを思い出した。また、「夢十夜」が「ユメ十夜」という題名でオムニバス映画になるという紹介記事も載っていた。第1夜は実相寺明雄監督で小泉今日子主演、第8夜は山下敦弘監督で藤岡弘、であるらしい。他の監督としては市川昆、清水崇、清水厚、豊島圭介松尾スズキ天野喜孝と河原真明、西川美和、山口雄大の名前が挙がっている。今年の秋に封切り予定だそうだ。
ダ・ヴィンチ』は「きょうの猫村さん」特集。猫村さんの質問に「生協の白石さん」が答えるというコーナーがあり、笑える。この春には「きょうの猫村さん」第2巻が発売されるとのこと。楽しみだ。
帰宅すると年賀状がまだ来ている。ただし、今回のはこちらの送った賀状に対する返信にあたるもの。こちらが新たに書く必要はないのでホッとする。