鴛鴦と文鳥。

目覚めると9時半。ああ、休日とは素晴らしいものだ。
風呂に入りながら、先日入手したばかりの桂吉朝「おとしばなし『吉朝庵』その2」から「たちきり」を聴く。芸者・小糸との恋に溺れる若旦那の目を覚まそうと百日間蔵に閉じ込める世知に長けた番頭の存在感と冥界に旅立った小糸のひく三味線の音がぷっつりと途絶えて線香が燃え尽きるオチの見事さ。初めて聴く噺だけに最後の場面の静謐さにスッと心を持っていかれた。
DVDでマキノ正博監督の「鴛鴦歌合戦」(1939年)を観る。この映画はビデオをすでに持っているのだが、大好きな作品なのでデジタルリマスターされたDVDで所蔵して置きたかったのだ。今回入手したコレクターズエディションには、マキノ監督がサッポロビールに頼まれて撮った「泡立つ青春」(1934年)というPR映画や監督のインタビューが入った特典ディスクの他に山根貞男山田宏一瀬川昌久大瀧詠一等各氏による解説をまとめたブックレットがついている。解説の中でも大瀧詠一氏のものは5ページにもわたる熱のこもった文章で、その詳細で濃い内容にはただただ恐れ入るばかり。それだけ高く評価されるのはこの作品が《日本映画史上、初の“徹底した”オペレッタ映画》だからである。そして大瀧さんは「鴛鴦歌合戦」の未来に歌手・石原裕次郎と日活アクション映画の登場をも見ているのだ。
映画は全編のほとんどが登場人物たちが歌い動くミュージカル形式で進んでいく。骨董好きで惚れっぽい殿様・ディック・ミネが供のものを引き連れて歌いながら登場するだけで画面が何とも言えず楽しい雰囲気を醸し出す。たれ目で歌が危なっかしいヒロイン・市川春代の愛らしさ、情けない親父役で好演の志村喬もまたいい。諸般の事情で2時間しか撮影に参加していない主役の片岡千恵蔵より、志村喬の方が存在感がある。骨董屋で手の出ない50両の掛け軸を殿様からプレゼントされた時のコケル仕草とその後の表情は絶品。1時間ほどの映画の中に35曲が盛り込まれ、最初から最後まで何とも言えず祝祭的な映画だ。理屈はいらない、ただただ観ていて幸せな作品。映画を難しく考え出したらこの映画や「決闘高田馬場」を観るといい。モヤモヤがスコーンと吹き飛んでしまうこと請け合いだ。

鴛鴦歌合戦 [DVD]

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鴛鴦歌合戦 コレクターズ・エディション [DVD]

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散歩がてらに近所のブックオフへ。105円で7冊。

諸井本は作家、政治家、スポーツ選手とりまぜての人物コラム。解説がすべて山藤章二氏の手書きになっているのが面白い。
周恩来本は文庫オリジナルで、大正7年に日本に留学していた周恩来の日記の翻訳。日記だけでなく、当時の東京の地図や風俗の写真やコラム等も入っている。脚注や年譜等もあり労作であることがわかる1冊。
「明治日本見聞記」は近年講談社学術文庫の売りとなっている外国人による近代日本の見聞録シリーズのひとつ。島津家に家庭教師に来た英国人女性の見た日露戦争当時の日本の姿が描かれている。
本を探している最中に、棚の下のストック用引き出しを開けて勝手に中身をチェックしている人を初めて見る。店員かと思ったらお客だった。気持ちはわからないではないが、それは反則でしょう。
帰宅して、宿題の感想文を書く。思うように書けないのと分量が多すぎるのでもう少し手を入れないとだめだ。
夕食後、テレビで「M1グランプリ」を観る。岡崎武志さんがテレビで共演したという麒麟をチェックするため。その麒麟はファーストステージはオチがうまくて決勝に進出するが、決勝戦のネタはそれより落ちるものだったために優勝できず。優勝はブラックマヨネーズ。このコンビも初めてなのだが、オーソドックスな掛け合いがハイテンションでエスカレートしていくたたみかけがうまい。優勝は順当ですね。
その後、「ブックカフェものがたり」を読了。ちゃんとした感想は後日にするとして、店の場所が分かる簡単な地図が入っているといいなと思う。そうすればこの本をカバンに入れておくだけでブックカフェ巡りができるから。ほとんどの店が自分のHPを持っていてそのURLが掲載されているのでそちらで確認をすることはもちろんできるのだけど、面倒くさがりなので。あと、文鳥舎に行ってみたい。三鷹に行く度に覗こうと思うのだが、いつも場所をうまく見つけられないんだよな。