“東京者”と「東京百話」。

朝から慌ただしく仕事をし、1時過ぎに慌ただしく職場を後にして出張へ出かける。昼食を食べる暇もなかったので、出張先がある駅のキオスクでパンを買い、地上に向かうエスカレーター上で急いで口に入れる。
少し遅れて指定された会議室へ。ちょうど始まったところだ。それから3時間余りその場所で過ごす。予定の5時を30分ほど過ぎたところで終了する。急いで、神保町へと向かう。
まずは、書肆アクセスから。先日は何も買わずに帰ったのだが、今日は買いたいものが沢山並んでる。

  • 『ふるほん福岡』Vol.1〜3
  • 彷書月刊』12月号
  • 「SHAPES OF BOOKS/林哲夫装幀作品集」
  • 海野弘「新編 東京の盛り場」(アーツ アンド クラフツ)

『ふるほん福岡』は福岡市古書籍商組合が出している雑誌。創刊号にエッセイを寄稿していた花田俊典氏の追悼文が同じ2004年に出た2号に掲載されている。花田氏は、僕が大学時代に新進気鋭の坂口安吾研究者として登場してきた人。精力的に執筆される作品論を読みながら、安吾研究も新しい時代に突入したという何やら開放感のようなものを感じたことを思い出す。追悼として白地社から出版された「坂口安吾生成」は386部の限定本のため、書店では手に入らない。なくなってしまう前に出版元に注文しなくてはと思う。
「SHAPES OF BOOKS」は、手のひらサイズの小冊子。限定50部のうちの49番だ。50番ではなく49というところがなんだかうれしい。ここに載っているものの中ではやはり『ARE』の表紙が一番好きだな。
海野本は、アクセスでやっている“東京者”という東京本フェアからの1冊。種村季弘「東京迷宮考」(青土社)とどちらにしようか迷った末に選んだ。
畠中さんから、“東京者”の目録冊子を貰う。紙の色が2パターンあり、昔の封筒のような紙質の茶色にする。前回の岡崎武志さんのフェアの冊子といい、貰ってうれしいものになっている。いつも畠中さんにはお気遣いいただき恐縮してしまう。
次に東京堂へ。今日の目的の1つが地元では手に入らないちくま文庫の復刊フェアの種村季弘編「東京百話」(全3巻)を購入することなので、それを探す。無事入手。今回の復刊の中では「東京百話」が一番人気らしく、天の巻は僕が買ったものが並んでいる最後の1冊だった。
すでに夕闇がおりて、古本屋は店じまいの雰囲気を漂わせ始めている。急いでコミガレを覗く。もう店員さんが片付けを始めようとしている。いつもの3倍速で台を眺めてこの3冊。

安岡本はやや大判の本で、手形の上に作者名と1970が書かれた黒い箱に惹かれる。また持った時のボール紙のぷにゅぷにゅ感もいい。
「やちまた」は朝日文庫版を探していてまだ未入手だったので手に取ると、作者の署名本であったので迷わず購入。かなり分厚い本なので実は後になるまで2冊本のうちの上巻だけであることに気がつかなかった。しかし、下巻らしき本は見た覚えがない。
それにしても、大きい安岡本と厚い足立本は、仕事用の薄いカバンには入らず、ビニールバッグで下げていくしかない。今にも袋を破って外へ出そうでちょっとこわい。
もうカバンにも入らないので見るだけのつもりで入った日本特価書籍にこの本があった。

村上春樹氏がシダー・ウォルトンスタン・ゲッツについてたっぷりと書いている様子を確認し、やっぱりレジへ。明日の日曜は、彼らのCDをかけながら、この本を読むことに決定する。
意味がなければスイングはない
帰りの車中は、携帯本の鴻巣友季子「明治大正翻訳ワンダーランド」(新潮新書)を読む。もともと翻訳家の書いた翻訳に関するエッセイに目がないので、楽しくページをめくる。第2章の若松賤子訳「小公子」で、英語の《三人称》をいかに日本語にうつすかという部分は翻訳家にしか書けないものだと思う。こういう本なら何冊でも飽きずに読めそうだ。
帰宅して『彷書月刊』に目を通す。坪内祐三さんと亀和田武さんの「極私的東京名所案内」を巡る対談から読み始める。僕の好きな銀座の教文館や『ノーサイド』の話が出てくるのでうれしい。『ちくま』に連載した松崎天民論が早く本で読めるようになって欲しいものだ。その他、グレゴリ青山岡崎武志南陀楼綾繁各氏の連載を面白く読む。
今日聴いたアルバム。

ジャズ・ギター+1 (紙ジャケット仕様)

ジャズ・ギター+1 (紙ジャケット仕様)

アンダーカレント

アンダーカレント

ケニー・ドーハムが地味なトランぺッターの代表なら、僕にとって地味なギタリストの代表がこのジム・ホールだろう。このスター性やカリスマ性を微塵も感じさせない風貌と“堅実”という言葉がピタリと当てはまるそのプレースタイル。強烈な色彩を持たない分、誰と組んでも相手を生かし、自分も殺さない関係を作れるのではないかと思う。
その代表的な1枚がビル・エバンスと共演した「アンダーカレント」だ。1曲目の「マイ・ファニー・バレンタイン」は異様に速いテンポで演奏されているので知られているが、そんなテンポでも“堅実”にギターを弾くこの人に好感を持つ。