スイートスポット。

明日の土曜日は通常半ドンの職場なのであるが、特別なイベントがあるため終日出勤となる。その代わり本日は午後2時過ぎに退勤となった。
この機を逃してなるものかと、神保町へ地元では手に入らない新刊を買いに行く。まず今日は日本特価書籍から始める。

「本屋さんの仕事」は昨年の4月から8月にかけて池袋コミュニティ・カレッジで行われた「講座太陽 本屋さんの仕事」(全5回)をまとめたものだ。僕はこの講座を受講していたのだが、仕事の関係や体調の問題などがあって最初の2回しか行けていない(ああ、もったいない)。講座のコディネーターであったクローバー・ブックスの平林享子さんが「本になります」と言っていたので、聴けなかった講座の内容を読めると心待ちにしていた1冊。この講座には「とり、本屋さんにゆく」(id:tori810)のとりさんも参加されていたとのこと。本屋好きならそそられる講師陣ですよね、やっぱり。
伊達得夫氏は書肆ユリイカの創設者。その人となりを知りたくて購入する。
その後、東京堂へ向かい、講談社文芸文庫の新刊を入手。

小林氏の自選作品集である「丘の一族」の収録作品を見て、「家族漂流」(文春文庫)とほとんどダブっていることを知りちょっと落胆する。「家族漂流」から「息をひそめて」が抜け、「八月の視野」が入っただけの違いである。「丘の一族」の解説に目を通すと坪内祐三さんは、こちらのそんな思いはお見通しだよと言わんばかりにこう書き記している。
《読者はぜひ、古本屋か図書館で『家族漂流』を見つけて、この『丘の一族』と読み比べてもらいたい。
ほぼ同じ作品群が収録されているのにその読後の印象がまったく違うことに驚かされるはずだ。》
というのも、この本は《著者自らが選び並べた(目次を作った)もの》であり、《それ自身で一冊の見事な長編小説になっているのだ》と言われば、さっきの落胆はどこかへ消え去り、読むのが待ち遠しくなるのだから現金なものだ。
その後、書肆アクセスを覗くが、今日は何も買わず、『未来』11月号を貰ってきただけ(畠中さんすみません)。本を買わない時はPR誌は貰わないルールを自分に課しているのだが、向井透史さんの「開店まで 早稲田古書店街外史」を読みたくてつい禁を破ってしまう。
さっそく、喫茶ぶらじるに入って読む。今回はさとし書房編。ご主人の佐藤敏さんは新潟出身とのこと。曖昧な記憶なのだが、「開店まで」に登場する古書店主の方は新潟の人が多いような気がする。古本屋と新潟に何か特別な関係があるのだろうか。自分の父親も新潟出身なのでちょっと気になる。
九段下で地下鉄を乗り換えて高田馬場へ。BIGBOX展を覗く。今日はここに寄るつもりであったため神保町で古本を眺めていてもあまり目に入ってこなかった。今日の古本は早稲田でという思いで棚を見る。しばらく棚を見ていても気持ちと手の動く本に出会わない。今日は古本と相性の悪い日かなと思っていると、急に気になる書名が並んだ棚に行き当たる。本の値札をみると古書現世。結局選んだ3冊がみな古書現世の本となってしまった。

大好きな編集者回想録が2冊と無頼派作家の写真(特に安吾の書斎の写真)で有名な写真家の伝記という取り合わせ。やはりここいらへんが自分のスイートスポットなのかなと思う。
会計の時にレジ打ちの向井さんにご挨拶するが、お仕事中なのでそれだけで失礼する。
帰りの車中は、小林信彦「テレビの黄金時代」を読む。単行本に続いての再読でありながらも、やはり面白い。小林氏は嫌がるだろうが、小説作品の評価は別にして、氏の作品として後世に残って行くのはこういった芸能史に関わるメモワールや芸人たちのポルトレなのではないかと思う。
地元に戻り、駅前に最近できたとんかつ屋でロースかつ定食を食べる。ご飯、トン汁、キャベツがおかわりできるシステム。ああ、20代だったらすべておかわりして思い切り食べ尽くしてやるのにと思いながら、出てきたものを残さず食べて満腹に。まあ、よしとしよう。
帰宅後、「テレビの黄金時代」読了。