失うもののない幸福と不幸。

カバンに携帯本を入れ忘れる。
帰り道、本屋に寄って1冊選ぶ。

数年前必要があって親本のカッパブックスブックオフなどで探したのだが見つからなかった思い出あり。今月の新刊で文庫になったので購入。本当は室生犀星「我が愛する詩人の伝記」(中公文庫)を買おうかと思ったのだが、1500円近くするので手が引っ込んでしまった。旧版を古本で探すことにする。
大戸屋で夕食。食事が来るまでに「名画読本」の“はじめに”と第1章を読んだ。
帰宅するとポストに白水社の「出版ダイジェスト」とBLUE NOTE CLUBの会誌が届いていた。「出版ダイジェスト」から気になる新刊(11月下旬刊行)。

面白そう。ただ、積ん読状態になっている“教授”の「篠沢フランス文学講義」(大修館書店)全5巻をまずどうにかしなければいけないだろうと心の声が聞こえるが。
BLUE NOTE CLUBを開くと、東芝EMIで発売している「ブルーノート決定盤1500」シリーズのこれまでの売り上げNO.1はソニー・クラークの「クール・ストラッティン」であると書いてある。ソニー・クラーク大好き人間としてはうれしい結果ではあるのだが、日本人の定番好きは変わらないなと己を棚に上げ苦笑いをしてしまう。せっかくなのでその定番を聴きながら読書。
昨日買ったアーウィン・ショー「夏服を着た女たち」(講談社文芸文庫)から、「エエジャナイカ」の北村さんご推奨の「80ヤード独走」を読む。フィッツジェラルドレイモンド・カーヴァーと同じ匂いのする世界。失われたものを見つめる視線の物語。主人公が《あれが頂点だった》と回想するような《根強い自信》に満ちた瞬間を持たない僕は、彼のように大きな喪失感にとらわれる心配がないことに思い至る。それが幸せなことかどうかを少し考えてみたほうがいいのかもしれない。

「クール・ストラッティン」の4曲目「ディープ・ナイト」で、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズのソロが終わり、ソニー・クラークのピアノが入ってくる瞬間はいつ聴いても心浮き立つ。ジャズを聴いてよかったなと今日も思う。