青空は太陽も連れてくる。

ゆっくり朝を過ごす。洗濯ものを干し、クリーニング屋に寄りってから駅へ。早稲田へ向かう。
東西線の駅を出るとそこはもう穴八幡だ。門前の文庫・新書台から2冊。

天気がよく、熱い日差しが本と本を選ぶこちらの首筋を強烈に照りつける。いやあ、暑い。
石段を上り、鳥居をくぐるとそこに向井さんが。横には昨晩ご一緒した『四季の味』の藤田さん。ご挨拶を交わしてから、棚を眺める。
いろいろ手に取ったり、迷ったりしながら結局この2冊。

前者は、新刊で買い逃していたので。後者は、いわゆるジャケ買い中川一政画伯による装幀が愛らしい。内容は『中央公論』に掲載した短文を中心に収めた随筆集。
先程、挨拶した時に向井さんから目録で注文した4冊のうち2冊が当たっていると告げられる。人気のありそうなものばかりだったのであきらめていたのだが、予想外の結果だ。その2冊も一緒に包んでもらう。

永島本は漫画とエッセイが入っている。文章の合間に挿まれたイラストがまたいい。
田村本は月の輪書林目録「田村義也の本」でその存在を知り、探していた本。横長、箱入りのその姿にまずうっとりする。装幀家としての仕事を振り返った本だけに、本の図録等が豊富に挿入されている。また、活字の組姿が美しい。奥付を見ればやはり精興社。いい仕事してますね。正直、田村氏の装幀には時々うるさく思われるものもあるのだが、ツボにハマった時はたまらない魅力がある。この本は、色遣いも含めセンスの良さが伝わってくるステキな装幀だと思う。
会計を済ますと、向井さんが本を2冊プレゼントしてくれる。佐野繁次郎装幀による東京創元社版「ことばの講座」の2巻と6巻。佐野繁文字も鮮やかなソフトカバーのかわいい本だ。僕が佐野繁次郎装幀本を集めているのでセレクトしてくれたのだろう。ありがとうございます、向井さん。残り期間も天候に恵まれるといいですね。
会場を後にして、穴八幡近くのモスバーガーで遅い昼食。食べていると、7、8人くらいの男子高校生の集団が席の周りにやってくる。うるさくなるのではと覚悟していたら、とても礼儀正しい男の子たちでうれしくなる。昔、近所で子供や学生に小銭や飲み物を上げたがる老人がいたが、こういう気持ちだったのではないかと思われた。僕もそうしたい気持ちはやまやまなのだが、単価の高いモスでそういった分不相応な行為ができるほど精神的余裕と経済的見通しのある人間ではないので、静かに店を出る。
帰りの車中は、立川談志「談志楽屋噺」(文春文庫)を読んだり、ipod志ん生師匠の「品川心中」、「江田島騒動」などを聴いたり。
帰宅後、「古書肆・弘文荘訪問記」を読了。死に近い病院のベッドの上で、見舞いに来た青木正美氏に熱く20年後の古書界の姿を語った反町氏が、その20年後に近い現在の状況を見てどのように思うのだろうか。古書界に名を残した1人の人物の思いを超えて時代も経済も古書の業界もどんどんと変わって行くのは仕方のないことなのだろうな。