西日の自転車。

夕方近くに、川沿いの土手道を自転車で走る。西日が容赦なく全身を照らし、強い川風が行く手を阻む。色づいた太陽光線に浮かび上がる光景は、まるでフィルター処理をした画面のように、いつもと違う深い色合いで世界を染めている。河原に生い茂る草々は、むっとするくらいに濃い緑をしているし、普段は何色と表現する気も起きない川の水は、深い藍色をたたえながら流れていく。こんな時は、生きているのもまあ悪くないなと思ったりする。
仕事を終えて、本屋へ。

筆者の小満んさんは、桂文楽師匠の弟子のひとり。横浜駅西口の相鉄ビルの下にあった相鉄演芸場で初めて文楽名人の噺を聴き、その魅力に一目惚れし、弟子入りへと進んでいく。へぇ、昔はそんな演芸場があったんだ。横浜駅はよく利用しているが、まったく知らなかった。本の随所に挿入されている文楽師匠の写真がいい。
同じく河出文庫9月の新刊である田中小実昌「上陸」は見当たらず。どうやら既に売れてしまったようだ。
家に帰って、コンビニで買った『週刊文春』を読んでいると、坪内祐三氏の「文庫本を狙え!」が田中小実昌「上陸」だった。一読し、「上陸」所収の初期短篇が読みたくなる。巻頭のノンフィクション小説「やくざアルバイト」は文藝春秋編「なんだか・おかしな・人たち」(文春文庫)に収録されていたはず。ちょっと部屋を探してみようかな。


【月刊アン・サリー計画/今日の1曲】
すみません。ネタ切れでしばらく休みます。